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毎日を一生懸命に生きていると、「このままでいいのかな」とふと立ち止まる瞬間はありませんか。
年齢を重ねるごとに「こうあるべき」という世間の枠に縛られて、なんだか息苦しさを感じたり。誰かのために役割をこなすうちに、自分の本当の気持ちがわからなくなってしまったり。
そんな迷いを抱えるあなたの心に、そっと寄り添ってくれる一冊があります。
千早茜さんの小説『マリエ』は、人生の大きな転換期を迎えた女性が、戸惑いながらも「自分だけの幸せの形」を見つけていく物語です。
この本を読むと、肩にはいっていた余計な力がふっと抜け、「私のままで大丈夫なんだ」と、何気ない日常がとても愛おしく思えてきます。
誰かと比べる人生に少し疲れてしまったあなたへ、この物語の魅力をお届けします。
突然の「終わり」は、新しい自分に出会うための入り口

終わりが訪れることは、決して絶望だけではないのかもしれません。
主人公のマリエは、40歳を目前にして夫から「恋愛がしたい」と切り出され、離婚することになります。
長年連れ添った夫婦の終わり。
普通なら悲劇として描かれそうな展開ですが、この物語は少し違います。
役所に離婚届を出しに行き、他人として生きていくことになった二人。
恋愛感情はなくなっても情はあると思っていたマリエですが、不思議なことに夫の匂いには明確な拒絶反応が出ていました。
そこから彼女は、自分自身の「香り」を変えるためにフレグランスのお店へと足を踏み入れます。
この離婚は、マリエにとって自分の人生を取り戻すためのスタート地点でした。
これまでは誰かのために演じていた役割を手放し、自分の好きなものをお金の許す限り自分で決めていける。
昔、父親の工具箱に憧れていたことを思い出し、「これからは何でも自分でやっていくんだ」と心が軽くなるマリエの姿に、読んでいるこちらまで胸がすくような解放感を覚えます。
私たちは無意識のうちに、妻として、母として、娘として、「求められる自分」を演じてしまいがちです。
でも、何かを手放したとき、そこには新しい風が吹き込みます。
マリエのまっすぐな歩みは、変化を恐れる私たちの背中を優しく押してくれます。

僕がもし一人になったらどうしよう?
考えたことなかったよ。
五感を満たす、香りと料理の繊細な描写
心がすり減ったとき、私達を癒してくれるのは、とても感覚的でささやかな喜びです。
千早茜さんの作品の大きな魅力は、なんといっても五感に訴えかける美しい描写です。
マリエは立ち寄ったフレグランスのお店で、自分と同じ「マリエ」という名前の香りを気に入って身にまとうようになります。
そして、その香りを身にまとった彼女が出会うのが、7歳年下の「由井くん」でした。
まりえの纏う香りの良さに惹かれ、二人の距離は少しずつ近づいていきます。
そして、作中に登場する食事のシーンが本当に魅力的です。
生理痛で落ち込んでいるときにふと立ち寄ったお店で食べる温かいフォー。
お正月、二日酔いで過ごしていた昔とは違い、自分のためだけに作るお雑煮や好きな食べ物。
由井くんに料理を教えることになり、二人で作って食べるご飯。
美味しいものを食べること、心地よい香りに包まれること。
大きな事件が起こらなくても、こうした日常のささやかな営みが、どれほど人の心をふくよかにしてくれるかが伝わってきます。
読んでいると、ふとキッチンに立って自分のためだけに美味しい料理を作りたくなってくるから不思議です。

自分が食べたいものを作るのって
すごく優しい時間に感じるね。
40代からの婚活と、女性を取り巻くリアルな現実

誰かと生きていくことの難しさと、社会が押し付ける価値観のズレが痛いほどリアルに描かれます。
自由を手に入れたマリエですが、一方で孤独死への不安や、親からのプレッシャーにも直面します。
同級生の孤独死を知らされ、「親より先に逝くなんて」と嘆く母親。
社会から見れば、ひとりで生きる女性はまだ「可哀想」や「不完全」という目で見られがちです。
そんな中、マリエはひょんなことから結婚相談所に登録し、婚活をスタートさせます。
ここでの描写が、本当に生々しくて考えさせられます。
相手を家事要員としてしか見ていない男性、自分の自慢話ばかりの男性、女性側の親の介護があるとわかった途端に見向きもしなくなる現実。
マリエは学生時代、古文の授業で「女はただ待つことしかできなかった」という事実に納得がいかなかった過去を思い出します。
現代になっても、女性が一人で生きていくには不自由なことが多く、結婚というシステムにいまだに古い価値観がこびりついていることに憤りを感じるマリエの姿には、深く共感する人も多いはずです。
「結婚しないと一人前だと思われない」 そんな世間の呪いのような言葉に対して、マリエはどう向き合っていくのか。
彼女の揺れ動く感情は、現代を生きる多くの女性たちの本音そのものです。

まだ女性の方が収入が低くなりがちだから
自立できていないと一人は厳しく感じちゃうかも…
相手の幸せは決められない。ただ、同じ世界を共有したい
恋愛と結婚、そして人生のパートナーとは一体何なのでしょうか。
マリエの日常には、年下の由井くんとの穏やかで刺激的な時間があります。
彼と一緒に過ごす時間は楽しく、心満たされるものですが、マリエは「楽しいだけで自分の人生を捧げられるのか」と葛藤します。
家族としてのイメージを相手に求めすぎているのではないか、という年上の友人・マキさんからのアドバイスは、ハッとさせられる言葉です。
そして、婚活で出会った本田さんという男性が放つ、ある言葉が胸に刺さります。
元夫が不幸な感じがしたから離婚した、と語るマリエに、彼はこう言います。
「それは相手の問題で、他人が幸せか不幸か決めないでいい」
私たちはつい、自分のものさしで「あの人は可哀想」「あの人は幸せそう」と測ってしまいますが、本当のところは本人にしかわかりません。
マリエが最終的にたどり着くのは、条件や世間体で選ぶ結婚ではなく、「同じ匂いや世界を共有する人が欲しい」というとてもシンプルで純粋な願いでした。
誰かと一緒に季節の移ろいを感じ、記憶に刻み、そして思い出してもらいたい。
その思いの温かさに、読み終えた後は心がじんわりと満たされます。

決めつけたらダメだと思っても
すぐに忘れちゃうんだよな。
この本はこんなあなたにおすすめです
今の生活に少しだけ息苦しさを感じているなら、ぜひページをめくってみてください。
・ おすすめの年代・環境
30代から50代の、人生の選択に迷うことがある女性。
もちろん、パートナーの気持ちを知りたい男性にもおすすめです。
・ こんな悩みを持っている方へ
結婚、離婚、独身であることなど、自分の今のステータスに対して世間の目が気になってしまう人。
自分を満たすための「好き」が何だったか、忘れてしまいそうになっている人。
・ どんな気分のときに読みたいか
平日の夜、お気に入りのお茶やワインを片手に、自分だけの時間をゆったり過ごしたいとき。
日々の家事や仕事に少し疲れて、「私の人生、これでよかったのかな」とふとセンチメンタルになったとき。
・ 読後に得られる変化
誰かが決めた「正解」ではなく、自分の感覚や「好き」という気持ちをもっと信じてみようと思えます。
ひとりで過ごす時間の豊かさも、誰かと共有する時間の愛おしさも、どちらも肯定できるようになり、肩の力を抜いて明日を迎えられるはずです。
あわせて読みたいおすすめの一冊
過去の辛い記憶や心の傷を抱えて生きる主人公が、思いがけない出会いやあたたかな手料理を通して、少しずつ自分の人生を取り戻していく再生の物語です。
生きづらさを感じているときや、傷ついた心をやさしく包み込んでほしいときにぴったり。
読んだあと、自分自身をそっと大切にしたくなるような、じんわりとした温もりが胸に広がります。
『マリエ』で描かれる「自分の人生を愛おしむこと」に心が動いた方にも、きっと深く刺さる一冊です。
読み終えて感じたこと(私の感想)
物語を閉じると、自分の身近な人たちの顔が次々と浮かびました。
私自身、今は結婚していて、自分では「幸せだ」と思って毎日を過ごしています。
でも、マリエの物語を読み進めるうちに、「では、相手はどう思っているのだろう?」と少し心配になりました。
私が感じている心地よさは、もしかしたら相手にとっては違うのかもしれない。
そんな不安がよぎったのです。
けれど、作中の本田さんの言葉に救われました。
幸せか不幸かは、こちらが勝手に計るものではないんですよね。
相手の心の中をすべて理解することはできなくても、このまま死ぬまで一緒に楽しく生きていけたらと願いつつ、日々の感謝をしっかりと言葉にして伝えていかないと、と強く思いました。
同時に、世間から見れば「やっぱり結婚していた方が安心だ」と見られる現実も確かに存在していて、もし自分が一人になってしまったらどうしよう、という強い恐怖心も感じました。
多様性が叫ばれる時代になっても、根底にある価値観はそう簡単には変わりません。
うちの子供たちが大人になる頃には、結婚の形や幸せのあり方はどう変わっているのだろう。
どんな時代になっても、彼らが自分自身の感性を大切にして生きていける世界であってほしいと、深く考えさせられました。
『マリエ』は、ただの恋愛小説でも、ただの婚活小説でもありません。
自分自身と丁寧に向き合い、生き直すためのヒントがたくさん詰まった美しい物語でした。
気になった方は、ぜひこの素敵な香りと日常の世界に触れてみてください。

こんなこと言ってはなんですが
僕は奥さんいっぱいで生活したいな。

将来そんな時代が来るのかもしれないね。
だけどまず働かないと時代が来ても無理だと思うよ。
気になった方はこちらからチェックしてみてください。
『マリエ』は、各ストアで詳しく見られます!
読書の時間が取りにくい方には、耳で楽しめる「Audible」もおすすめです。
通勤中や家事の合間に聴けるので、意外と読書が身近になりますよ。
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