葉真中顕『家族』感想|逃げ場のない「愛」と支配の恐怖。本当に恐ろしいのは人間の心かもしれない

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ニュースで痛ましい事件を見るたびに、
「どうして逃げなかったんだろう」「なぜ周りの人は気づかなかったんだろう」
と不思議に思ったことはありませんか?
私たちが普段当たり前のように過ごしている日常のすぐ隣には、
決して覗いてはいけない底なし沼のような世界が広がっているのかもしれません。

今回ご紹介する葉真中顕さんの『家族』は、
実際に日本を震撼させた連続変死事件をモチーフにした、
身の毛もよだつようなサスペンス小説です。
読み進めるのが怖い、でも先が気になってページをめくる手が止まらない。
そんな圧倒的な引力を持った作品です。

人間の心の闇と、支配の恐ろしさを徹底的に描き出した本作は、
あなたの「家族」や「人間関係」に対する価値観を根底から揺さぶる力を持っています。
「どうして人は洗脳されてしまうのか知りたい」
「圧倒的な没入感のある重厚なドラマを味わいたい」という方の心に、
強烈な爪痕を残す一冊です。

読書と猫が大好きです。
「次に何読もう?」のヒントになる記事を届けています。
あなたの“次の一冊”につながればうれしいです。

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「家族」という呪いの言葉

マインドコントロールされるイメージ画像

愛情で結ばれているはずの美しい言葉が、
これほどまでに恐ろしい鎖に変わるなんて想像もしていませんでした。

物語の中心にいるのは、夜戸瑠璃子という一人の女性です。
彼女は天才的な犯罪者でもなく、腕力のある屈強な男でもありません。
ごく普通の、少しぽっちゃりとした中年の女性です。
しかし彼女は、言葉と暴力、そして「家族」という枠組みを巧みに使い、
次々と他人の家に入り込んでは人々を支配していきます。

血の繋がりがなくても、同じ屋根の下でご飯を食べれば家族。
最初はそんな温かい言葉で居場所のない人たちを迎え入れます。
しかし、ひとたびその輪の中に入ってしまうと、
待っているのは抜け出すことのできない地獄のような生活です。
「愛しているから」「家族だから」という大義名分のもとで
行われる理不尽なルールと恐怖による支配。

被害者たちは、いつの間にか考える力を奪われ、彼女の言いなりになっていくのです。
マインドコントロールがどのようにして完成していくのか、
その過程があまりにもリアルで、背筋が凍るような思いがしました。

ネオンくん
ネオンくん

こんな事されたら
知ってても従っちゃうかも…

警察の「民事不介入」という巨大な壁

警察の「民事不介入」という巨大な壁のイメージ画像

勇気を出して助けを求めても、その声が届かない現実があまりにも残酷です。

この物語の中で、何度か被害者たちが警察に駆け込む場面があります。
全財産を奪われ、家を乗っ取られ、暴力を振るわれている。
命の危険を感じて必死に事情を説明するのに、
警察官から返ってくるのは「家族間のトラブルには介入できない」という言葉でした。
いわゆる「民事不介入」の原則です。

どんなに異常な状況であっても、「家族です」と言われてしまえば、
それは身内の揉め事として処理されてしまう。
命からがら逃げ出して、やっとの思いでたどり着いた交番で突き放されたときの絶望感は、
想像するだけで息が苦しくなります。
「家族」という言葉が、被害者を守るどころか、
加害者を守る最強の盾になってしまっているのです。
この社会のシステムに潜む欠陥を見せつけられ、強い憤りを感じずにはいられませんでした。

ゴハンくん
ゴハンくん

全部の問題には対応出来なくても
深刻な事件は助けて欲しいよね。

善意の人が加害者に変わる恐怖

極限状態に追い込まれたとき、人は自分を守るために他者を傷つけてしまう。
その心の動きがとても痛ましく描かれています。

この小説が本当に恐ろしいのは、
ただの一人の悪人が全員をいじめているわけではないという点です。
支配者である瑠璃子は、被害者同士を互いに監視させ、
「躾(しつけ)」と称して暴力を振るわせます。
最初は抵抗していた人たちも、自分が暴力を受けないために、
あるいは「自分を守ってくれない相手が悪い」と恨みを募らせるように仕向けられ、
次第にためらいなく他者を殴るようになっていきます。

昨日まで励まし合っていた仲間が、今日には自分を殴る加害者になる。
罪悪感と恐怖で正常な判断ができなくなり、泥沼のように連鎖していく暴力。
少数派に回ったときの人間がいかに脆い存在であるかを見せつけられ、
胸が締め付けられるような思いがしました。

ネオンくん
ネオンくん

恐怖に屈して自分も手を出してしまうのは
胸が張り裂けそうになるよ…

こんなあなたにおすすめの一冊です

ここまで少し怖いお話をしてきましたが、この本はただ恐ろしいだけの小説ではありません。
人間の本質や社会のあり方を見つめ直す、大切なきっかけをくれる作品です。

・こんな方におすすめです
・20代からシニア世代まで、深い心理描写のあるミステリーが好きな方
・「なぜ人は他人に支配されてしまうのか」という人間の心理に興味がある方
・実際に起きた事件の裏側にある、複雑な人間ドラマについて深く考えたい方

・こんな気分のときに読みたい本です
・休日のまとまった時間に、じっくりと物語の世界に没頭したいとき
・日常のささいな悩みから離れて、圧倒的な熱量を持つ小説に触れたいとき
・通勤や通学の合間に、ハラハラしながら少しずつ読み進めたいとき

・この本を読むことで得られる変化
・ごく普通の日常や、何気なく笑い合える人間関係がいかに尊いものか実感できる
・ニュースを見る視点が変わり、被害者の見えない痛みに想像力が働くようになる
・「家族」という言葉の裏にある危うさを知り、人との適切な距離感を考え直すきっかけになる


【あわせて読みたい関連記事】

実際の事件をモチーフにした重厚な社会派ミステリや、
人間の心の裏側に迫る物語が好きなら、柚月裕子さんの『教誨』もおすすめです。

自分の子どもを含む幼女2人を殺害したとして死刑が執行された女性死刑囚。
彼女が最期に遺した「約束は守ったよ、褒めて」という不穏な言葉の意味を探るため、
身元引受人となった遠縁の女性が彼女の過去を辿っていく物語です。

『家族』で描かれた洗脳や恐怖支配と同様に、なぜ彼女が追い詰められ、
逃げ場を失っていったのか……単なる「怪物」として切り捨てられない
人間の脆さと社会の闇に胸が締め付けられます。

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読み終えて感じたこと

ページを閉じた後も、しばらくその場から動けなくなるような重たい余韻がありました。

今まで私は、人間同士、
どんなにこじれてもきちんと話せば何とか分かり合えるものだと心のどこかで信じていました。
でも、この物語を通して、世の中には「絶対に関わってはいけない人たち」が
確かに存在するということを深く勉強させられました。

人間の人格というものは、極限まで追い詰められると本当に何も考えられなくなり、
抵抗する気力すら奪われてしまうのだと知りました。
正常な判断ができなくなる恐怖、そして、自分がそうなってしまうかもしれないという恐怖。
本を読んでこれほどまでに恐ろしいと感じたのは、なかなかない体験でした。

物語の中で「人は貰ったものしか返せない」という言葉が出てきます。
もしそれが本当だとしたら、幼い頃から暴力や歪んだ愛情しか貰ってこなかった子どもたちは、
一体どうなってしまうのでしょうか。
そんな人たちが大人になり、
自分の中にある歪んだものを他人にぶつけてしまうのだと考えると、
本当に恐ろしくてやりきれない気持ちになりました。

暗く凄惨な物語ではありますが、ただ怖いだけでなく、
社会の歪みや人間の弱さを真正面から描いた傑作です。

少しでも悲しい連鎖が止まるように、そして少しでもいい社会になっていくように。
私自身も、周りの人たちとの関わり方を大切にしていきたいと強く思いました。
人間の心の深淵を覗いてみたい方は、ぜひ覚悟を決めて、この本を開いてみてください。

ゴハンくん
ゴハンくん

僕はみんなに可愛がって貰ってるから
たくさん愛情返せるんだよ。

ネオンくん
ネオンくん

優しくするのがいいけど
本当に危ない人だと思ったら
距離を空けるのも忘れないでね。


気になった方はこちらからチェックしてみてください。
『家族』は、各ストアで詳しく見られます!

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