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最近、身近な大切な人に対して「言葉が足りなくてすれ違っているな」と感じることはありませんか。
「もっとこうしてほしいのに」「どうしてわかってくれないんだろう」と、勝手な想像を膨らませて、ひとりでモヤモヤしてしまう。
そんな、相手との心の距離やコミュニケーションに悩んでいるときに、そっと心に寄り添ってくれるのが、青山美智子さんの『人魚が逃げた』です。
本作は、華やかな銀座の街を舞台に、人々の小さな勘違いやすれ違いが、ある不思議な出会いをきっかけにふわりと解きほぐされていく連作短編集です。
読み終えたあと、あなたのとなりにいる大切な人と、もう一度ゆっくり話をしてみたくなるはずです。
銀座の街に現れた「王子様」が教えてくれること

歩行者天国で「人魚を探している」と語る謎の王子様。
彼との奇妙な出会いが、悩める人々の心を少しずつ動かしていきます。
物語の始まりは、休日の銀座。
テレビの情報番組の街角インタビューで、「王子様」の格好をした男性が「僕の人魚がいなくなってしまって」と語る不思議な場面からスタートします。
現実の街に紛れ込んだおとぎ話のような設定ですが、ここで描かれているのは、私たちと同じように日常の人間関係や人生の歩み方に悩む、等身大の人々の姿です。
年上の恋人にふさわしい自分になりたくて、無理をして見栄を張ってしまう青年。
子育てが一段落し、自分の人生を見失いかけている母親。
離婚のショックから立ち直れず、過去の思い出に囚われている男性。
行動的な妻との性格の違いに引け目を感じている小説家。
そして、傷つくことを恐れて素直に甘えることができないクラブのママ。
彼らは皆、相手のことを想うあまり、勝手に「こう思われているに違いない」「自分なんてふさわしくない」と決めつけ、ひとりで空回りしてしまっています。
そんな彼らの前に現れる王子様もまた、人魚姫への想いを抱えて迷っているひとりでした。
現実とファンタジーが交差する銀座の街角で、「相手にふさわしいかどうかは、相手が決めること」というシンプルな事実に、登場人物たちは気づかされていきます。

人魚姫って何だか深い話なんだなって
改めて気がついたよ。
私たちの現実は、たくさんの物語が重なってできている

ひとつの出来事も、見る人によってまったく違う物語になります。
相手の視点を知ることで、世界は大きく変わるのかもしれません。
本を読み進めながら、人と人とのコミュニケーションの難しさ、そして人間の想像力が持つパワーの大きさを強く感じました。
私たちは普段、自分だけの視点で作られた「自分の物語」の中を生きています。
だからこそ、相手の些細な言動を自分のフィルターを通して解釈し、勝手に傷ついたり、悩んだりしてしまうのです。
でも、本当はこの世界は、自分の物語と相手の物語、そしてすれ違うたくさんの人々の物語が幾重にも重なり合ってできています。
勝手な思い込みを手放し、勇気を出して相手と向き合うことで、止まっていた時間が再び動き出す瞬間が本作にはたくさん描かれています。
相手が本当に何を考えているのかは、言葉にして伝えてもらわなければわかりませんし、自分も想いを口にしないと決して伝わりません。
もしかしたら、自分が悪い方に想像していた現実は、相手にとってはまったく違う、あたたかい物語なのかもしれない。
物語は、最後にならないとどうなるかわからない。そんな希望を持たせてくれるエピソードがたっぷり詰まっています。

うまくいかないかもって心配になるからこそ
優しさも生まれてくるのかもしれないね。
『人魚が逃げた』はこんな方におすすめです
この本は、以下のような悩みや気持ちを抱えている方にぴったりです。
・夫婦関係やパートナーとのコミュニケーションに、少しすれ違いを感じている方
・相手を想うあまり、自分の本音を言えずに我慢してしまう方
・子育てや仕事が落ち着き、これからの自分の人生について考え始めている方
・休日の午後、お気に入りの喫茶店でコーヒーを飲みながら、前向きな気持ちになりたいとき
相手の気持ちを勝手に推測して疲れてしまったとき、この本を開いてみてください。
「もっと素直になっていいんだ」「言葉にして伝えてみよう」と、ふっと肩の力が抜けて心が軽くなるのを感じられるはずです。
青山美智子さんらしい、登場人物たちがゆるやかに繋がっていく見事な仕掛けや、過去作のキャラクターが少しだけ顔を出す遊び心も、読書の時間をさらに豊かなものにしてくれますよ。
こちらもオススメです。
一穂ミチさんの『スモールワールズ』は、それぞれに秘密や痛みを抱えた人々のいびつで愛おしい繋がりを描いた、6編からなる連作短編集です。
不妊に悩む主婦と孤独な少年の交流や、加害者と被害者遺族による手紙のやり取り、性別を変えて15年ぶりに現れた我が子との再会など、ままならない人生の中でもがきながらも一筋の光を見出そうとする人々の姿が丁寧に綴られています。
思い通りにいかない日常の中で、誰かの悲しみに寄り添い、喜怒哀楽を分かち合うような心揺さぶられる人間ドラマを味わいたい方におすすめの一冊です。
読了後の私の気持ち
物語を読み終えたとき、私は妻との日々のやり取りを思い返していました。
最近、妻に対して「もっとこうしてほしい」と不満に思ったり、逆に「自分はどう思われているんだろう」と勘違いやすれ違いを感じることがありました。
でも、この本を読んで、自分の感じたいように悪い方向へストーリーを作ってしまっていたのは、私自身だったのだと気づかされました。
人間の想像力はものすごい力を持っています。
だからこそ、その想像力を相手を疑うためではなく、信じるために使いたいと思いました。
しっかり顔を見て話をすること。
時には時間を置いて、どうなるか見守ること。
すべては最後までどうなるかわからないからこそ、日々の積み重ねを大切にしていきたいと心から思いました。
そして、自分がこうしてブログで発信した感想が、もしかしたら誰かの運命をほんの少し変えるきっかけになるかもしれない。
そんなワクワクした気持ちも湧いてきました。
本当に素敵な作品に出会えました。
まずは、一番身近にいる妻と、ゆっくり話をしてみようと思いました。

僕も人間になれたら
感謝の気持ち伝えに行きたいな。

僕は人間になったら
焼肉食べ放題に絶対行くんだ。
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