森永卓郎『発言禁止』レビュー:本音と偏見が光る一冊の魅力

「発言禁止 誰も書かなかったメディアの闇」森永卓郎の書籍カバー画像

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森永卓郎さんの『発言禁止 誰も書かなかったメディアの闇』は、ステージ4のがんを宣告された著者が「どうせ死ぬのなら本当のことを言おう」と腹をくくり、これまで語れなかったメディアと権力の裏側を記した一冊です。

冒頭から強烈ですが、読んでいくうちに「今まで何となく感じていた違和感」が、一本の線としてつながっていきます。テレビの空気感、政治報道の“偏り”、ネットで語られる陰謀論との境界線…。
本書はそれらを煽るわけではなく、「著者が実際に見聞きし、体験したこと」を通して、読者が自分の頭で考えられるように促してくれる本でした。

そして何より、読後には静かな衝撃が残ります。
「知るって怖い。でも知らない方がもっと怖いのかもしれない」
そんな気持ちになる一冊です。

この記事では、読者目線で誰におすすめか・どんなシーンで読みたいか・読後に得られる気づきを中心にまとめています。ネタバレは避けながら、本書の魅力を丁寧にお伝えします。


この本から得られる“3つのポイント”

まず最初に、この本を読むことで得られることをシンプルにまとめます。

  1. テレビや新聞を「そのまま信じない視点」が身につく
  2. 権力とメディアの関係を、ひとりの内部者の実体験として知れる
  3. 情報を受け取るときの“距離感”や“自分で考える習慣”が生まれる

難しい学問ではなく、語り口はやわらかく、著者の実体験がメイン。
だからこそ、社会に詳しくない人でもスッと読めて、じわじわ効いてくる内容です。


どんな本? ネタバレなしで魅力をやさしく紹介

テレビが政府に忖度した放送をしているイメージ画像

本書は、著者の人生の後半、特にがん宣告を受けてからの“覚悟”がにじむ一冊です。

テレビ業界に長く関わってきた著者だからこそ見えたもの。
財務省とマスコミの関係、出版の裏側、税務調査の圧力、コメンテーターという仕事の空気感…。

どれも一般の視聴者には触れられない情報ばかりですが、語り口は驚くほど落ち着いています。
怒りをぶつけるというより、「こういうことが実際にあった」と静かに語る感じです。

そのため、刺激的な内容でありながら、読後に妙な説得力が残るのです。

さらに、池上彰さん・堀江貴文さんなど、テレビでよく見る人々との関わりや議論の裏側も描かれていて、読み物としても十分に面白い。
芸能界の変化やコンプライアンスの流れ、「ラジオはなぜ自由で面白いのか?」など、日頃なんとなく感じていた疑問に答えてくれる部分もあります。


誰におすすめ? 年齢・悩み・気分でわかる読者ターゲット

この本、意外と“万人向け”ではありません。
しかし、刺さる人には深く刺さります。

● 情報に振り回されたくない人

ニュースを見るたびにモヤモヤする。
SNSやテレビで何が本当かわからなくなる…。
そんな人にとっては、自分の“立ち位置”を取り戻せる本になります。

● 政治やメディアの裏側に少し興味が出てきた人

専門書を読むほどではないけれど、
「実際どうなってるの?」と気になり始めた人にはピッタリ。

専門用語は少なく、ほぼエッセイ感覚で読めます。

● 30〜60代の働き盛りの読者

メディア、政治、財務省、税務調査といったワードは、社会経験を積むほどリアルに響きます。
職場での“忖度”や“空気”の存在が気になり始めた大人には、納得できる部分が多いでしょう。

● 気持ちが沈んでいるとき・真実を知りたい気分のとき

心がザワつくテーマなので、軽い気持ちで読むとやや負担が大きいかもしれません。
「本音で語る本が読みたい」「嘘のない言葉に触れたい」という気分の日に読むのがおすすめです。

福祉・生活保護の実態を深く描いた中山七里『護られなかった者たちへ』のレビュー記事も人気です。


どんなシーンで読みたい? “静かな夜”に合う一冊

この本は、落ち着いた環境で読むと、内容がより染み込みます。

  • 夜の寝る前
  • 休日の午後のゆっくりした時間
  • カフェで一人で考えたいとき
  • ニュースの報道に違和感を覚えた日の夜

ガツガツ読む本ではなく、行間に込められた「本音」を味わうタイプ。
著者の人生の集大成でもあるため、静かな時間にじっくり向き合うと心に残りやすくなります。


読後に得られる気づきと変化

国が裏で圧力をかけているイメージ画像

● “情報の受け取り方”が変わる

テレビを見ても、「これは誰が得するのか?」
「どういう力が働いているのか?」と考えるクセがつきます。

盲目的に信じるのではなく、
適度な距離を置いてメディアと付き合えるようになるのが大きな収穫です。

● 権力の構造が“自分事”になる

財務省や国税庁、税務調査の現実などは、普段ほとんど知る機会がありません。
しかし、著者の体験を読むことで、
「これは遠い世界の話ではなく、いつか自分も影響を受けるかもしれない」と実感できます。

● 人の“本音”の重みを知る

死を前にした人の言葉は、やはりどこか違います。
軽い気持ちで読んだつもりが、
「ああ、こういう勇気もあるのか」と胸をつかまれる瞬間があります。

● 自分で考える習慣がつく

本書は特定の思想に染める本ではありません。
むしろ、「あなたはどう思う?」と問いかけてくるタイプ。
読者自身が考え始めることで、世界の見え方がひとつ変わります。


この本の魅力は“偏りを含めて人間的なところ”

本書には、著者の好き嫌いや極端に感じる部分も確かにあります。
しかし、それも含めてリアルで、人間的で、読んでいて飽きません。

「完璧な評論」ではなく
「命をかけた実体験」です。

だからこそ、賛否が分かれる内容でも、読者はどこか引き込まれてしまいます。

読者としては、著者のすべての意見に納得する必要はありません。
ただ、
「こういう目線で世界を見ている人がいる」
という事実を知るだけで、視界は確実に広がります。


まとめ:読めば“世界の見え方が変わる”一冊

『発言禁止 誰も書かなかったメディアの闇』は、
ただの暴露本でも、ただの告発でもありません。

著者の人生と覚悟がにじみ出た、魂のこもった言葉の集まりです。

テレビの裏側、財務省の力、マスコミの沈黙、芸能界の変化…。
どれも刺激的ですが、読み進めるほど、
「知らなかった世界」が立体的に浮かび上がってきます。

そして読後、
「情報を鵜呑みにしない自分」がそっと育っていることに気づきます。

今の時代を生き抜くために、一度読んでおいて損はない一冊です。

興味を持った方は、ぜひ静かな時間にゆっくりと開いてみてください。


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