ラブホテルを舞台に描かれる人間ドラマ|小説感想

井町さとるの小説『LOVE LOVE ラブホテル』書影 ラブホテルを舞台にした連作短編集

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ラブホテルの話は、利用する側の視点で語られることがほとんどです。
でもこの本は、働く側の目線から始まります。

支配人の仕事は、必要以上に踏み込まないこと。
声をかけない。詮索しない。見なかったことにする。
それが、この場所で働くためのルールです。

けれど、毎日のように人の出入りを見ていれば、
「何も感じない」というわけにはいきません。

ここに来る人たちは、
楽しそうに見えても、
どこか切羽詰まっていて、
それぞれ事情を抱えています。

『LOVE LOVE ラブホテル』は、
その事情を暴こうとはしません。
ただ、見送る側が何を見て、何を見ないようにしているのかを、淡々と描いていきます。

ラブホテルという場所が、
欲望のためだけにあるのではなく、
行き場のない気持ちが流れ着く場所でもある。
読み進めるうちに、そんなふうに見え方が変わっていきました。


『LOVE LOVE ラブホテル』とはどんな本か

ラブホテルの受付のイメージ画像

LOVE LOVE ラブホテルは、ラブホテル「パッシオ」を舞台にした連作短編集です。
語り手は、支配人の佐藤公彦。
月曜日から日曜日まで、曜日ごとに訪れる客と出来事が描かれていきます。

ラブホテルというと、
不倫、浮気、性欲――
そんなイメージが先に立つかもしれません。

けれどこの物語で描かれるのは、
部屋で何をしていたかより、
出入りの仕方や態度を見ていると、
その人の暮らしや立場が、なんとなく伝わってきます。


ラブホテルは、人生が交差する場所

公彦が働く「パッシオ」では、
従業員は客に余計な声をかけません。
それは配慮であり、暗黙のルールでもあります。

その静かな空間に現れるのは、
就活に疲れた大学生、
孤独な高齢者、
行き詰まった中年男性、
家庭を持つ主婦、
夜の世界で生きる人たちなど。

彼らは皆、
説明を求められず、
名前も聞かれずに過ごせる時間を求めて、ここに来ます。


いくつもの人生が交差する物語

ラブホテルの部屋の中のイメージ画像

この物語には、
さまざまな立場の人たちが登場します。

仕事や将来に疲れ、
誰かと穏やかな時間を過ごしたいと願う人。

孤独を抱え、
少しちぐはぐな優しさを差し出してしまう人。

現実を変えたくて、
危うい希望に手を伸ばしてしまう人。

一度だけ、と自分に言い聞かせながら、
日常から踏み外してしまう人。

どのエピソードも、
誰かが極端に悪者として描かれるわけではありません。

「信じたかった」
「疑いたくなかった」
「普通になりたかった」

その気持ちが重なった結果、
取り返しのつかない選択に繋がってしまう。
その現実が、静かに描かれていきます。

中には、読んでいて胸が苦しくなる話もあります。
「どうするのが正しかったんだろう」と、立ち止まって考えてしまう場面も出てきます。

けれど、わざと重くしているわけではなく、
人の弱さが、自然な形で出てきます。


見送る側にも、物語がある

物語が進むにつれ、
読者の視線は、客だけでなく、
支配人・佐藤公彦自身にも向かっていきます。

これまで多くの人生を見送ってきた彼にも、
簡単には語れない過去と、
選び直すことのできなかった瞬間がありました。

終盤で描かれる出来事は、
それまでの物語の受け取り方を、
少しだけ変えてしまいます。

読み終えたあと、
正しさや善悪では割り切れない感情が、
静かに残る一冊です。


誰におすすめの本か

こんな人に読んでほしい

  • 30代〜60代の大人の読者
  • 人生の選択について考えることが増えた人
  • 人間ドラマが好きな人
  • 表と裏、両方の顔に興味がある人
  • 派手さより“現実感”を重視する読書が好きな人

人の弱さや、社会のひずみがじわっと浮かび上がる物語が好きな方には、
一穂ミチ『ツミデミック』もおすすめです。
こちらも、誰かを断罪するのではなく、「そうなってしまった事情」に目を向けさせてくれる一冊でした。


どんなシーンで読みたいか

  • 夜、ひとりで過ごす時間
  • 仕事や人間関係に少し疲れたとき
  • 誰とも話さず、本と向き合いたい夜
  • 人の人生について考えたい気分の日

短い話の積み重ねなので、
少しずつ読むのもおすすめです。


読後に得られる気づき・変化

この本を読み終えたあと、
ラブホテルの見え方が変わります。

同時に、
「人を簡単に決めつけてはいけない」
そう思うようになります。

誰もが、
ギリギリのところで生きている。
一歩間違えれば、
自分も同じ場所に立っていたかもしれない。

そんな気づきが、
静かに心に残ります。


作者・井町さとるさんの視点が生む価値

作者自身が、
ラブホテルの支配人として働いているからこそ、
描写にリアルさがありました。

誇張しない。
煽らない。
見下さない。

だからこそ、
登場人物たちが「作り物」に見えず、
実在する誰かの人生のように感じられます。


まとめ:ラブホテルは、人生の縮図だった

『LOVE LOVE ラブホテル』は、
官能的な本ではありません。

でも、
読後に心に残る本です。

人の弱さ、
愚かさ、
そしてどうしようもなさ。

それらを含めて、
「人間なんだ」と思わせてくれる一冊。

軽い気持ちで手に取ったのに、
思った以上に深く刺さる。
そんな読書体験を求めている人に、
そっとすすめたい本です。


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