『温室デイズ』感想|逃げた子と耐えた子、どちらも間違っていない

『温室デイズ』瀬尾まいこ著|いじめと学級崩壊を描いた中学校が舞台の小説

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この本を読むことで得られるのは、
正しいと思う気持ちを手放さなくても、
ちゃんと立っていられるんだという感覚です。

いじめ、学級崩壊、見て見ぬふりをする大人たち。
決して軽くはないテーマなのに、読み終えたあとには
「それでも、生き方は選べる」と思わせてくれる一冊。

今回は
温室デイズ/瀬尾まいこ
について、ネタバレを抑えながら、読者目線で丁寧に紹介します。


学生時代は守られている。でも、息苦しくもある

学校に居場所がない女の子のイメージ画像

「学生時代は守られている」
そんなふうに言われることがあります。

失敗してもやり直せて、
外の世界ほど厳しくはない。

でも『温室デイズ』を読んでいると、
その「守られている場所」が、
必ずしも安心できるとは限らないことに気づかされます。

壊れかけた教室。
荒れていく学校。
止められない暴力といじめ。

逃げ場の少ない場所だからこそ、
小さな歪みが一気に広がってしまう。

この物語は、
子どもたちが閉じた世界の中で、
どうやって息をしようとしたのかを描いています。


真面目であることが、攻撃される理由になる怖さ

主人公の中森みちるは、
間違っていることを間違っていると言える子です。

そろそろ、ちゃんとした方がいい。
このままじゃダメだ。

その言葉が、
彼女を守るどころか、
標的に変えてしまう。

真面目に生きようとする人が、
なぜか一番傷つく。

これは学生時代に限った話ではありません。
大人の世界でも、
空気を壊す人、正論を言う人が
疎まれることは珍しくない。

だからこそ、みちるの姿は胸に残ります。


逃げる優子、耐え続けるみちる

中学校の中庭の花壇のイメージ画像

この物語が印象的なのは、
いじめに対する「正解」を一つにしていないところです。

前川優子は、
教室から距離を取る選択をします。

別室登校。
学校以外の居場所。
話を聞いてくれる大人。

一方で、みちるは教室に残り続けます。

逃げない。
投げ出さない。
学校を、クラスを、何とか戻そうとする。

どちらが正しいかは描かれません。
瀬尾まいこさんは、
「どちらも間違っていない」と示してくれます。

逃げることをやり通した優子。
耐えることをやり通したみちる。

どちらも、必死だった。
どちらも、自分の人生を守ろうとしていた。


大人は万能じゃないという現実

この物語に出てくる大人たちは、
理想的とは言えません。

担任は見て見ぬふりをする。
助けを求めても、何も変わらない。

「教師は生徒を愛している」
そう信じていた主人公が、
そうではない現実にぶつかる場面は苦しいです。

それでも、
スクールサポーターの吉川や
カウンセラーの存在が描かれます。

完璧じゃない。
でも、話を聞こうとする人。

世界を救えなくても、
一人の心を楽にすることはできる。

この描き方が、とても瀬尾まいこさんらしいと感じました。


不良の瞬も、ただの「悪」じゃない

ヤクザの父を持ち、
恐れられている伊佐瞬。

彼は暴れるし、怖い存在です。
でも、孤独で、
引っ込みがつかなくなっているだけの少年でもある。

止め方を知らない。
弱さの出し方を知らない。

優子が話を聞くだけで、
少し落ち着いていく姿を見て、
「なんで大人はこれをやらないんだろう」と思わされます。

誰かに話を聞いてもらうこと。
それだけで、人は変わる可能性がある。


この本は、こんな人におすすめ

・学生時代につらい記憶がある人
・いじめを見て見ぬふりした後悔がある人
・子どもに関わる立場の大人
・正しさが報われなかった経験がある人
・気持ちが少し疲れているとき

特に、
「逃げたほうがいいのか、踏ん張るべきか」
悩んでいる人には、深く刺さると思います。


学校という閉じた世界で苦しむ子どもたちの姿を描いた作品として、
『月がある』(木塩鴨人)も強く印象に残っています。
こちらも、正しさや居場所について考えさせられる一冊です。

どんなシーンで読みたいか

・夜、ひとりで静かに読みたいとき
・学生時代を思い出したとき
・自分の価値観が揺らいでいるとき

重たい場面もありますが、
一気読みより、少しずつがおすすめです。


読後に残る気づきと変化

この本を読み終えたあと、
こんな気持ちが残ります。

・正しさは、簡単に人を守ってくれない
・でも、正しさを手放さなくていい
・逃げることも、耐えることも、生きる選択
・誰かに話を聞いてもらうことは、弱さじゃない

そして、
「自分は、誰かの話をちゃんと聞けているだろうか」
そんな問いが浮かびます。


タイトルにだまされていい一冊

『温室デイズ』というタイトルから、
ほのぼのした青春小説を想像すると、
きっと裏切られます。

でも、その裏切りは悪くない。

荒れた中学校。
壮絶ないじめ。
壊れかけた世界。

それでも、
人は考え、選び、前に進める。

この物語は、
「それでも生き方は選べる」
ということを、優しく、厳しく教えてくれます。

学生時代を過ぎた今だからこそ、
もう一度読んでほしい一冊です。

きっと、
あの頃の自分と、
今の自分の両方に、
静かに届くはずです。


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