一つの判断から、すべてが動き出す『ブレイクショットの軌跡』感想

逢坂冬馬『ブレイクショットの軌跡』感想|選択と連鎖を描く群像小説

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ブレイクショットの軌跡を読むことで、
私たちは「自分の選択が、どこまで誰かに影響しているのか」を考える視点を手に入れます。

・正しいと思って選ばなかった沈黙
・波風を立てないための見過ごし
・生活のために飲み込んだ違和感

それらが、思いもよらない場所で、思いもよらない人生につながっていく。
この本は、その連鎖を否定も断罪もせず、ただ丁寧に描ききります。

この本は、
過去の選択を後悔させるのではなく、
「ここからどう動くか」を考えさせてくれます。


ばらばらに見える人生が、少しずつ近づいていく

物語は、自動車工場で働く期間工・本田昴から始まります。
正社員になれるかどうか、ぎりぎりの契約期間。
安定した生活を願う、ごく普通の若者です。

彼が目にしてしまったのは、
製造ラインで落ちた一本のボルト

報告すればいい。
でも、空気が悪くなるかもしれない。
評価に響くかもしれない。
昨日、同僚と険悪になったばかりだった。

「今じゃない」
その判断が、物語の歯車を静かに回し始めます。

一方、舞台はアフリカへ。
武装組織に組み込まれ、車で寝泊まりしながら生きる若者エルヴァとフェリックス。
彼らが仕事に使用するしているのが、日本製のSUV――ブレイクショットです。

さらに、
巨大ファンドの副社長として生きる男。
町工場で真面目に働いてきた板金工。
投資やマネーリテラシーを語る人々。
サッカーに人生をかける若者たち。

最初は、まったく交わらない人生に見えます。
けれど、ページを進めるほどに、
登場人物も、場所も、立場も違うのに、
同じ出来事の影響を受けていることに、少しずつ気づいていきます。


善良さが、報われない世界で

日本のSUVがアフリカで活躍しているイメージ画像

この物語で何度も胸を締めつけるのは、
善良であろうとする人ほど、追い込まれていく現実です。

板金工として誠実に働いてきた後藤友彦。
不正を見過ごさず、声を上げようとした結果、
彼の人生は、ある事故をきっかけに大きく変わってしまいます。

事故後の後藤家の描写は、読むのがつらい。
前頭葉の損傷で、
記憶が抜け落ち、感情が制御できず、
「昨日の自分」と「今日の自分」がつながらない。

それでも家族は、日常を続けます。
怒りも、悲しみも、疲労も抱えながら。

ここで描かれるのは、
「回復」や「救い」だけではありません。
それでも生きていく、という現実です。

この部分に、自分や身近な人を重ねた読者も、きっと多いはずです。


お金・成功・正しさへの、静かな問い

作中では、
投資セミナー、YouTube、マネーリテラシーといった
今の時代にとても身近なテーマも描かれます。

「知識を持てば守れる」
「学ばない人が損をする」

その言葉は、一見正しく見えます。
でも本当にそうなのか。

誰が、どこで、何のために語っているのか。
ノーポジションのように見える言葉の裏に、
別の意図が隠れていないか。

読みながら何度も、
「もし自分だったら、どうしただろう」と考えていました。
この本は、そういう読み方を自然とさせてくる一冊です。


誰におすすめしたいか

この本は、次のような人に強くおすすめです。

・20代後半〜50代
 仕事、家庭、将来の選択に迷いがある人

・非正規雇用、下請け、現場仕事を経験した人
 「声を上げにくい空気」を知っている人

・お金や投資の話に、違和感を覚えたことがある人

・ニュースを見て
 「結局、弱い立場が割を食う」と感じたことがある人

派手な成功譚が読みたい人には、向かないかもしれません。
でも、今の社会を生きている実感がほしい人には、深く刺さります。


それぞれ別の人生が、少しずつ重なっていく物語が好きな方には、
青山美智子さんの『月の立つ林で』もおすすめです。
日常の中にある、ささやかなつながりを描いた一冊でした。


どんなシーンで読みたいか

・仕事終わり、何も考えたくないけど
 スマホの短文では物足りない夜

・将来の選択に、正解が見えなくなったとき

・「このままでいいのかな」と
 ふと立ち止まったタイミング

ボリュームはあります。
正直、軽くはありません。

それでも、
読み進めるほどに、
「ここまで来たら最後まで見届けたい」
そんな力を持った物語です。


読後に得られる気づきと変化

ビリヤードのブレイクショットのイメージ画像

読み終えたあと、
世界の見え方が少し変わります。

・自分の沈黙も、選択だったのだと気づく
・正しさは、立場によって簡単に揺らぐと知る
・それでも、行動する人を讃えたくなる

すべてを予測することはできない。
でも、考えた上で踏み出すことはできる

この本は、
「恐れずに、堂々と、最初の一打を放て」
そう背中を押してくれます。


伏線がつながる快感と、読書のよろこび

章ごとに視点が変わり、
同じ出来事が、別の人物の目で語られる。

「この人は、こんな気持ちだったのか」
「ここで、あれにつながるのか」

エピローグで一気に回収される伏線は、
思わず声が出るほどの爽快感があります。

フィクションだからこその大胆さ。
でも、現実もまた、
私たちが思っている以上につながっている。

そのことを、強く実感させてくれる一冊です。


まとめ|あなたの人生のブレイクショットは?

『ブレイクショットの軌跡』は、
一台のSUVを軸に、
現代社会の矛盾と、人間の弱さ、そして希望を描いた群像劇です。

誰の人生を、どこで最終幕にするのか。
それを決めるのは、他でもない自分自身。

読み終えたあと、
きっとあなたも考えるはずです。

最初の一打が、どこまで広がっていくのかは分からない。
それでも、考えながら打つことはできる。
この物語は、そう教えてくれます。

重いけれど、誠実で、読み応えのある一冊。
今の時代にこそ、手に取ってほしい小説です。


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