『新しい法律ができた』が面白すぎて、自分でも書いてみました

本の紹介

1. 「新しい法律ができた」──贅沢なショートストーリー集

タイトルに惹かれて手に取った一冊、『新しい法律ができた』。
この本には、25人の作家によるショートストーリーが収められており、すべての話が「新しい法律ができた」から始まるという、なんともユニークな作品集です。

どの物語も短くまとまっているのに、それぞれの作家さんの個性がしっかりと表れていて、読んでいてとても面白い。テーマが同じでも、こんなに切り口が違うんだと驚きの連続でした。読後はまるで、ちょっとした文学の宝石箱を覗いたような気持ちに。

何よりも、この一冊の中で知らなかった作家さんとの出会いがあったのが嬉しかったです。読み終えてすぐに、その作家さんの他の作品も読みたくなったほど。短編集って、こういう偶然の出会いがあるのが魅力ですね。

2. 自分でも書いてみたくなりました

読んでいるうちに、「自分でも書いてみたいな」という気持ちがむくむくと湧いてきました。
短編って、長編ほどの時間も構想も必要ない分、気軽に書ける楽しさがあります。そして、アイディア勝負というか、自分の中の小さな「もしも」が形になるワクワク感があるんですよね。

気になった方はこちらからチェックしてみてください。

『新しい法律ができた』は各ストアで詳しく見られます!

新しい法律ができた
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3. ここからはオリジナル作品です

というわけで、思いきって私も「新しい法律ができた」というテーマで、ショートストーリーを書いてみることにしました。

ここから先は、私が書いたオリジナルのショートストーリーになります。
「新しい法律ができた」という同じ出発点から、どんな物語が生まれるのか。読書の延長線として、またちょっとした創作として楽しんでいただけたら嬉しいです。

少しでも興味を持ってくださった方は、ぜひお読みください。


「新しい法律ができた」

その法律は、ほとんど誰にも注目されずに可決された。ニュースサイトの片隅に小さく、「NFT技術、紙の本に適用開始」とだけ記された見出し。テクノロジー好きの一部が反応した程度で、世間はその重大さに気づいていなかった。

けれど、それは静かに、確かに、世界を変える始まりだった。

新しい法律の内容はこうだ。紙の本や雑誌にもNFT技術を紐づける。つまり、どんなに古本として売り買いされようと、その本の著者には、わずかでも報酬が入り続ける仕組み。これまで「一冊売れたらそれきり」だった印税が、読まれ続ける限り「生きた価値」になったのだ。

最初は誰も信じなかった。「本が売れても、そんな何十円のために何になるの?」と。けれど、変化は思ったよりも早かった。大手古書店がシステムを導入し、ネット通販でもNFT付き書籍が当たり前になったころ、作家たちの顔つきが変わった。

ある日、長者番付の上位に、聞いたこともない作家の名前が現れた。
「ネットで無料公開していた小説が古本になって飛ぶように売れてるらしい」
「NFT付きで取引されるたびにお金が入ってくるんだってさ」
「それが100万冊だと?」
そんな都市伝説のような話が、やがて現実になっていく。

若者たちは次々にキーボードを叩き始めた。物語を書き、SNSで広げ、読者と直接つながった。今や「作家になりたい」という夢は、特別な才能がなくても目指せるものになった。少しずつ収入が増え、少しずつ世界が変わっていった。

皮肉なことに、そのころAIは黄金期を迎えていた。
どんな文章でも一瞬で書き上げ、文法ミスもなければ構成も完璧。
「もう人間が書く意味なんてない」と、誰もが思いかけていた。

だが、実際に売れていたのは、人間が書いた物語だった。
時に未熟で、感情の起伏が激しく、矛盾すら孕んだ言葉たち。
でも、そこには確かに「生きた声」があった。
AIには生み出せない、“わからなさ”の中の真実がそこにはあった。

そしてそれを読んだ人たちが、また変わった。

読み手は書き手になり、書き手は読み手になった。
誰もが誰かの物語に耳を傾け、時に泣き、時に笑った。
NFTによって本が「動く資産」になったとき、文字は再び力を持ったのだ。

それから五年が過ぎたころだった。
とあるカフェで、こんな会話が聞こえてきた。

「最近さ、戦争してる国ってなくない?」
「ホームレスの人、見かけなくなったね」
「政治家の悪口とか、最近誰も言わないような気がする」

それは、誰かが世界を変えたという話ではない。
ただ、全員が少しだけ、知識を得ただけだった。
人間関係のコツ、お金の使い方、健康や歴史のこと。
それらを物語を通じて学び、「争いは無知から生まれる」と理解したのだ。

本は、もはや暇つぶしの娯楽ではなくなっていた。
人生を導く地図であり、人を繋ぐ橋であり、未来を照らす灯台になっていた。

今日もまた、どこかで誰かがページをめくる。
静かな部屋で、あるいは電車の中で、ベッドの上で。
そしてその一冊が、次の誰かの人生を変えていく。

世界を変えたのは、大きな革命でも、偉人の一言でもなかった。
それは、ただ一冊の本。
そして、その本を「読みたい」と思った、あなたの気持ちだった。

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