1. 『予想どおりに不合理』とは？
『予想どおりに不合理』は、行動経済学者ダン・アリエリーによるベストセラーで、私たち人間がいかに”予想通りに不合理な行動をしてしまうか”を、さまざまな実験を通じて紹介する本です。合理的に判断しているつもりでも、実は感情や比較、周囲のルールに大きく影響されているという事実に気づかせてくれます。
2. なぜこの本が必要なのか？
「なんであんな買い物しちゃったんだろう？」「また無駄遣いしてしまったかも…」と感じたことがある人にぴったりです。
その後悔や迷いの多くは、あなただけのミスではなく、人間に共通する”行動のクセ”かもしれません。この本を読むと、それらがパターンとして理解できるようになります。
3. 人は比較で判断してしまう：オトリ効果
私たちは、物事を1つだけで判断するのが苦手です。だからこそ、選んでほしいものの隣に、少し見劣りする選択肢を置くだけで、狙った選択肢が魅力的に見えてしまいます。これが「オトリ効果」。
たとえば3つのプランが並んでいるとき、真ん中のプランを目立たせるために、わざと似ていて劣るものを隣に置くと、多くの人がその真ん中を選びます。人の判断は、比較に強く左右されるのです。
4. 無料の魔力に弱すぎる
「無料」という言葉に、人はびっくりするほど惹かれてしまいます。
たとえ本当に価値のある選択を逃しても、”タダ”だからと無料の選択肢を取ってしまう。これは合理的な判断ではないですが、誰にでも起こる予測可能な心理の動きです。
5. 社会規範と市場規範の違い
人の行動には大きく2つのルールが影響しています。
- 市場規範：お金や契約で動く関係
- 社会規範：思いやりや親切心で動く関係
たとえば、ボランティアで無償で手伝ってくれる人にお金を渡したら、逆にモチベーションが下がってしまった。そんな経験はありませんか？
この2つの規範は混ざると崩れてしまい、一度お金が関わると、元の親切ベースの関係に戻るのがとても難しくなります。
6. 自分のものは特別に見える：持ち物マジック（エンドウメント効果）
人は、何かを手に入れて「自分のもの」になった瞬間に、それを特別なものだと感じてしまいます。
たとえば、無料でもらったマグカップを「これ、けっこういいやつかも」と思ってしまったり、フリマで売ろうとして「これには思い出があるから高くないとイヤ」と感じたり──。
このように、自分が持っているというだけで、その物の価値を高く感じてしまうのが「エンドウメント効果」と呼ばれる心理です。
誰にでもある感覚ですが、ときには冷静な判断をゆがめてしまうこともあります。
7. キャッシュレスは使いすぎの元？
現金でお金を支払うとき、手からお札がなくなる「痛み」を感じます。一方、クレジットカードやスマホ決済ではその痛みが弱くなり、つい使いすぎてしまいます。
同じ支払いでも、方法が変わるだけで「お金を使った実感」がまるで違ってくるのです。
8. 感情が判断を狂わせることもある
怒りや興奮など、強い感情があると、人は冷静な判断ができなくなります。理性でブレーキをかけられるはずのことが、感情に支配されて、思わぬ行動につながってしまうことも。
これは「自分は理性的だ」と思っている人ほど気づきにくい落とし穴です。
9. 先延ばしをやめるには？
ダイエット、貯金、勉強など、「やらなきゃ」と思っているのに、つい後回しにしてしまうことはありませんか？
この本では、それを「人間のクセ」として受け入れたうえで、意思ではなく”仕組み”で解決することをすすめています。
たとえば：
- 自動積立を設定する
- 締切を自分で決めて共有する など、行動しやすい環境を自分で作るのがポイントです。
10. 不正は「ちょっとだけなら…」が危ない
人は、大きな不正には抵抗を感じても、「少しくらいなら」と許してしまいがちです。
たとえば、現金を盗むのはためらっても、会社の備品をちょっと持ち帰るのは気にならない──それもまた、人の不合理な心理のひとつです。
11. 行動のクセを知ると、自分を守れる
この本が教えてくれるのは、「人は合理的じゃない。でもその非合理さにはちゃんとパターンがある」ということ。
無意識のうちに選ばされていたり、損をしていたりすることも、しくみを知っていれば避けられます。
日々の選択を後悔しないために、自分のクセを知ることが第一歩。『予想どおりに不合理』はそのヒントが詰まった一冊です。
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