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『無人島のふたり』がくれた、生きる意味と静かな覚悟

mujinto no futari yamamoto fumio cancer diary review.jpg 山本文緒
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目次

  1. はじめに
  2. 膵臓がんステージ4——日々が「最後」になる
  3. 「うまく死ねますように」に込められた祈り
  4. 書くことを最後まで手放さなかった作家の魂
  5. 残される人への想い
  6. 読後に残ったもの——人生の問いと行動への決意
  7. おわりに

1. はじめに

『無人島のふたり』は、作家・山本文緒さんが膵臓がんステージ4と診断されてから亡くなるまでの約4ヶ月間を綴った、まさに魂の記録です。この本は、ただの闘病記ではありません。死に向かう恐怖と冷静さ、残される夫への愛情、そして作家としての矜持が、静かに、しかし力強く記されています。


2. 膵臓がんステージ4——日々が「最後」になる

告知を受けたその日から、時間の感覚が「月単位」から「週単位」、やがて「明日」へと縮まっていく過程が、克明に描かれています。日々の体調の浮き沈みや、抗がん剤治療の苦しみ、そして緩和ケアへと移行していくなかで、身体が衰えていく実感と、心の中の揺れが痛いほど伝わってきます。


3. 「うまく死ねますように」に込められた祈り

作中で何度も出てくる「うまく死ねますように」という言葉。この言葉には、「死にたくない」と思う気持ちと、それでも避けられない現実とのせめぎ合いが込められているように感じました。涙をこらえながら読み進めたページの多くに、この言葉が胸を刺すように響いてきます。


4. 書くことを最後まで手放さなかった作家の魂

死を目前にしても、「書きたい」という気持ちを失わず、最期の日記を「書けましたらまた明日」で締めくくった山本文緒さん。その姿勢に、作家としての矜持を見ました。書くことへの情熱が、自身の心を支えたことも随所に語られています。


5. 残される人への想い

夫への感謝、医療関係者への敬意、読者への心配り。山本さんの文章からは、周囲の人々への愛情がにじみ出ています。重たい現実に触れる内容でありながら、最後まで語り続ける姿勢には、読者に対する静かな信頼と感謝がにじんでいました。


6. 読後に残ったもの——人生の問いと行動への決意

この本は、命に限りがあるという当たり前のことを、私たちに強烈に思い出させてくれます。「自分の人生はどう生きるべきか」「残された時間をどう使うか」——そんな問いが自然と胸に湧き上がってきました。そして、今できることを先延ばしせずに実行していこうという決意が芽生えました。


7. おわりに

『無人島のふたり』は、決して長い作品ではありません。しかし、読み終えた後に残る余韻と深さは計り知れません。作家として、人として、どんなふうに人生を終えたいか。そんなことを静かに考えさせてくれる一冊でした。死に向き合うという「現実」を、これほど美しく、誠実に描いた作品はそう多くありません。

心よりご冥福をお祈りいたします。そして、このすばらしい本が、一人でも多くの人に届きますように。


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