※このサイトはアフィリエイト広告(Amazonアソシエイト含む)を掲載しています。
胸を締めつけるほどの“現実”に向き合う一冊
この本で得られること・感じられること
この巻を読むことで、私たちは 「事故の裏側で何が起きていたのか」 を肌で感じることができます。
そして、事故によって“人生を変えられてしまった人びと”の姿を通して、
- 組織のあり方
- 責任とは何か
- 本当の誠実さとは何か
- 人が悲しみに向き合う姿
- 安全の裏側にある膨大な努力
こうしたテーマを深く考えさせられます。
重い内容ですが、読み終えるころには 人間を見る目が変わるような読書体験 が残りました。
作品の印象と、胸に迫るストーリーの力

『沈まぬ太陽〈3〉御巣鷹山篇』は、シリーズのなかでも圧倒的な迫力をもつ巻です。
ここでは国民航空123便の墜落事故が中心に描かれますが、その目的は“事故の再現”ではありません。
作者が真正面から描くのは、むしろ 事故のあとに残された人間の姿 です。
救助、遺族への対応、現場の混乱、企業の保身、政治の思惑。
それぞれがぶつかるように進む物語に、読む側の心も揺さぶられます。
一方で、この巻は単に「悲惨さ」を描いているわけではありません。
恩地元など誠実な人間が、状況のなかでどう生きようとしたのか。その姿が読者を強く支えます。
誰におすすめか(年齢層・悩み・気分)
・社会派小説や骨太な物語を読みたい人
深く考えさせられるテーマを求めている人には必ず刺さります。
・組織の理不尽に悩んでいる人
保身と圧力で動く上層部。誠実でいるほど孤立する恩地。
「社会の仕組みって、こういうところがあるよね…」と共感が生まれます。
・実際の航空事故の背景を知りたい人
描写は小説ですが、背景には多くの事実が影となって存在します。
事故を知らない世代にも読みやすい構成です。
・心を揺さぶる作品を求めている人
軽さのない読書をしたい時にぴったりです。
読後に静かに深呼吸したくなるような重みがあります。
組織の闇や、現場で誠実に働く人たちの姿をもっと知りたい方には、清武英利さんの『しんがり』もおすすめです。
どんなシーンで読みたいか
・静かな休日や夜の落ち着いた時間に
ページを急いでめくるというより、ゆっくり心で受け止めていくタイプの作品です。
・人生の節目や迷いがある時に
「誠実であることの意味」
「どの組織にいるかで人生はどう変わるか」
こうしたテーマが、今の自分の状況とどこか重なり、問いを投げかけてくれます。
・社会ニュースに触れて気持ちがざわついている時に
人の弱さ、組織の矛盾、責任の所在。
ニュースでは見えない“水面下の動き”がよく理解できるようになります。
作品が描くもの:胸を締めつける“人間”の連鎖
巻の前半では、管制と123便の通信がうまく噛み合わない場面が描かれます。
機体は操縦不能となり、正確な位置も分からないまま北へ逸れ、夜の山中に消えていきます。
この描写を読むだけで、読者の胸は苦しくなります。
とはいえ、作品が本当に重くなるのは“墜落後”です。
恩地は救助隊として現場へ向かい、そこで目にした現実に言葉を失います。
山の深い闇、炎、救助の遅れ、生存者のかすかな声。
ヘリが入れず、地形が厳しく、救助までの道のりが多くの命を奪いました。
さらに、遺族の前に立つ恩地の姿には胸が締めつけられます。
「欲しいのは食べ物ではなく、情報なんです」
この一言が、遺族の気持ちをすべて語っています。
恩地たちは加害者側として警察に制限され、現場にも立ち入れず、ただ頭を下げ続けます。
彼の誠実さは伝わる一方で、会社の姿勢はあまりに対照的で、読者としても苦くなります。
企業と遺族、そのあまりに深い溝

事故の原因をめぐって、情報は錯綜し、報道も加熱します。
ボーイング社の修理ミス説、点検不足、コスト削減…どれも“本当らしく見える”ため余計に混乱が広がります。
一方で、遺族の願いはとてもシンプルです。
- 家族の姿を探したい
- 最期の状況を知りたい
- なぜこんな事故が起きたのかを説明してほしい
しかし国民航空側の対応は、気持ちに寄り添うものではありません。
補償の話が早々に出てきたり、「早く決めて利子をもらった方が得だ」と迫るような社員もいたり。
その姿勢が、遺族の怒りをさらに強めてしまいます。
そんななか、恩地だけは誠実に向き合います。
遺族に寄り添い、時に罵声を浴びながらも目をそらさず、責任者として動き続けます。
彼の姿は、読む側の心を強く揺さぶります。
「おすたか会」という希望
遺族は最初、会社の牽制もありバラバラでした。
しかし合同葬儀をきっかけに、「おすたか会」が誕生します。
SNSもない時代に、遺族が情報を共有し、力を合わせようと決断したこと。
その強さに胸が熱くなりました。
そして彼らの「人災だ」という訴えは、社会を動かす大きな力となります。
読後に得られる気づきや変化
・安全は“当たり前”ではない
飛行機に限らず、私たちが毎日利用しているサービスも同じです。
目に見えない努力と、地道な確認の上に成り立っています。
・誠実さはすぐには報われない
恩地のように正しい行動をしても、理解されないことがあります。
とはいえ、誠実さは必ず誰かに届き、未来の誰かを救うのだと思えます。
・遺族の悲しみは想像以上に深い
部分遺体でもいいから連れて帰りたい。
その気持ちを知るだけで、自分の価値観が揺らぎます。
・組織の体質は人の命より優先されることがある
だからこそ、声をあげること、改善を求めることが大切だと痛感します。
・「風化させない」ということの大切さ
事故は過去のものではなく、今につながる“教訓”です。
忘れないことが、安全を守る力になります。
この作品を読むべき理由
『沈まぬ太陽〈3〉』は、読む側にも覚悟が必要な一冊です。
しかし、その重さのなかにこそ価値があります。
- 生きることの偶然
- ひとの弱さと強さ
- 組織の光と影
- 誰かのために立つ勇気
こうしたテーマが、読み終えたあとも心の中で息づき続けます。
あなたが今、生き方や働き方に迷っているなら、恩地の姿勢は必ず力になります。
また、事故を知らない世代にも、空の安全がどう積み上げられてきたのかを知るきっかけになります。
まとめ
『沈まぬ太陽〈3〉御巣鷹山篇』は、胸に重くのしかかる物語です。
しかし「読んで良かった」と心から思える一冊でした。
描かれているのは悲劇ではありますが、それだけではありません。
遺族の強さ、現場の人々の誠意、恩地のまっすぐな姿勢。
そして、失われた521人の“確かな人生”。
この作品は、今も社会の根底に流れる「安全とは何か」を問い続けてくれます。
重いけれど、だからこそ読む価値がある。
そんな特別な巻でした。
気になった方はこちらからチェックしてみてください。
『沈まぬ太陽〈3〉御巣鷹山篇』は、各ストアで詳しく見られます!
読書の時間が取りにくい方には、耳で楽しめる「Audible」もおすすめです。
通勤中や家事の合間に聴けるので、意外と読書が身近になりますよ。
→ Audibleを30日無料で試してみる
コメント