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この本を読むことで得られるのは、
「言えなかった気持ちと、届かなかった想いを、そっと抱きしめ直す時間」です。
失ってから気づく大切さ。
伝えなかった優しさ。
守れなかった約束。
それでも、人は誰かを想い続けていいのだと、
雪が降り積もるように、静かに心へ染み込んでくる物語です。
八事という町で、想いは静かに降り積もっていく
――声なき想いが、人生に降り積もる
名古屋市東部にある八事という町。
観光地でもなく、派手さもないけれど、確かに人が暮らし、歴史が積み重なってきた場所。
この物語は、その八事を舞台に、
三人の若者の視点から、罪・後悔・友情・そして純粋すぎる愛を描いていきます。
読んでいるあいだ、何度も胸が詰まり、
それでもページをめくる手を止められない。
そんな一冊でした。
物語の軸にあるもの(ネタバレ控えめ)

主人公は、長瀬律。
幼なじみの山内沙耶伽と、兄妹のように育った少年です。
家族ぐるみの付き合い。
商店街の精肉屋。
叱ってくれる大人がいて、守られていた子ども時代。
けれど、家庭内暴力、失踪、死。
どうにもならない現実が、少しずつ日常を壊していきます。
雪の夜に起きた、取り返しのつかない出来事。
それを胸の奥に封じ込めたまま、律は大人になります。
一方、北海道へ渡った沙耶伽。
彼女もまた、父を亡くした痛みと、生きる重さを抱えていました。
そしてもう一人。
二人の間を、静かにつなごうとした少年、高橋哲哉。
この三人の人生が、
雪・声・想いというモチーフで、静かに重なっていきます。
雪の中から聞こえる「声」という表現
本作でとても印象的なのが、
雪の中から、亡くなった人の声が聞こえるという描写です。
それは幽霊の話ではありません。
もっと人間的で、切実で、祈りに近いもの。
後悔。
伝えられなかった言葉。
守りたかった誰かの存在。
雪がすべてを覆い、音を吸い込むからこそ、
心の奥に沈んでいた声が浮かび上がる。
読んでいると、
「自分にも、聞こえたことがあるかもしれない」
そんな気持ちになります。
誰におすすめの本か
この本は、特にこんな人に届いてほしいです。
- 10代後半〜40代
- 大切な人との別れを経験したことがある人
- 「あのとき、こうしていれば」と考えてしまう夜がある人
- 静かな恋愛小説、心の内側を描く物語が好きな人
- 派手なハッピーエンドより、余韻を大切にしたい人
若い人の純粋な心情が、丁寧に描かれているので、
学生時代を思い出して胸が苦しくなる人もいるかもしれません。
一方で、大人になった今だからこそ、
登場人物たちの選択の重さが、より深く刺さります。
静かな記憶や、言葉にできなかった想いに心を動かされた方には、坪井聖さんの『なでしこの記憶』もおすすめです。失われた時間と向き合う視線が、この物語とやさしく響き合います。
どんなシーンで読みたいか
この本は、
「時間に追われているとき」よりも、
心に少し余白があるときに読んでほしいです。
- 雪が降る日
- 夜、ひとりでコーヒーを飲みながら
- 誰かのことを思い出してしまうとき
- なんとなく寂しさを感じる夜
短い文と、静かな語り口なので、
一気読みもできますが、
ゆっくり味わう方が、余韻が残ります。
読後に得られる気づき・変化
伝えなかった優しさは、残り続ける
沙耶伽は、律を想うがゆえに、
自分の抱えているものを言葉にしません。
「相手の人生を壊したくない」
その思いは、
誰かを大切にしようとした証でもありました。
この物語は、
優しさが、ときに選択を難しくしてしまうことを、
静かに教えてくれます。
人は、知らないうちに誰かの支えになっている
高橋哲哉という存在が、この物語をやさしくしています。
自分の恋より、友情を選び、
すれ違う二人を、必死につなごうとした少年。
彼がいたからこそ、
律は壊れずにいられた。
誰かの人生に、
自分が歯車のように組み込まれていること。
それは、気づかないまま起きているのかもしれません。
幸せな人生とは何かを問い直す
律の歩んだ道は、
決して平坦なものではありません。
思い通りにならなかった選択や、
手放すしかなかった時間を抱えながら、
彼は人生を進んでいきます。
それでも、
かつて誰かと分かち合った
ある時間の記憶が、
彼の人生を静かに支え続けている。
読み進めるほどに、
「幸せとは何か」
「人は何を抱えて生きていくのか」を、
自分自身に問い返したくなります。
作者さんのまなざしが、とてもやさしい

この作品には、
誰かを断罪する視点がありません。
間違えた人も、
弱かった人も、
選べなかった人も、
どの人物も、黙って背負っているものがあるように感じられます。
だからこそ、
読者は登場人物を嫌いになれない。
宮野入羅針さんの文章は、
静かで、淡々としていて、
それなのに感情が深く染み込んでくる。
作者が、
この物語の登場人物たちを
本当に大切にしていることが伝わってきます。
読み終えたあと、雪を見るたびに思い出す
読み終えた直後よりも、
数日経ってから、じわじわ効いてくる本です。
雪が降った日。
ふと静かになった夜。
「あの声、聞き逃していないだろうか」
そんなことを考えてしまう。
悲しい。
切ない。
苦しい。
それでも、
どこか心があたたかくなる。
悲しいを通り越した先にある物語でした。
最後に
『八事の町にもやさしい雪は降るのだ』は、
誰かを失ったことがある人、
そして、これから誰かを大切にしたい人に、
そっと寄り添う一冊です。
この本に出会えたこと自体が、
ひとつの「声」なのかもしれません。
雪が降ったら、
ぜひ思い出してみてください。
そして、
まだ間に合う言葉があるなら、
どうか、伝えてください。
きっと、この物語も、
それを願っていると思います。
気になった方はこちらからチェックしてみてください。
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