『わたし、定時で帰ります。』レビュー|働き方に悩む人へ

『わたし、定時で帰ります。』朱野帰子|残業文化に一石を投じるお仕事小説

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「残業が当たり前」
「みんなやっているから仕方ない」
「自分だけ先に帰るなんて無理」

そんな気持ちを、少しでも抱いたことがある人にこそ読んでほしい一冊です。

『わたし、定時で帰ります。』(朱野帰子)は、
働き方・生き方・人との距離感を、説教くさくなく、でも逃げずに描き切ったお仕事小説。

この本を読むことで、こんな変化が期待できます。

・定時で帰ることへの罪悪感が少し軽くなる
・頑張りすぎている自分に気づける
・仕事と人生のバランスを見直すきっかけになる
・「それでもいいんだ」と思える安心感が残る

働き方改革という言葉が流行る前から、
「自分の人生を会社に奪われない」というテーマを真正面から描いてきた作品です。


『わたし、定時で帰ります。』ってどんな話?

仕事終わりに一杯飲みにいくイメージ画像

舞台は、Web制作会社「ネットヒーローズ株式会社」。

主人公は、東山結衣
彼女の信条は、とてもシンプル。

「わたし、定時で帰ります」

有給も取るし、定時で帰る。
仕事をサボるわけではなく、むしろ効率よく、きちんとやる。

けれど職場には、

  • 風邪をひいても休まない「皆勤賞女」三谷
  • 仕事中毒で休みの日も仕事のことばかり考える元婚約者・種田晃太郎
  • 無謀な案件を安請け合いし、現場を疲弊させる上司・福永
  • 残業=美徳という空気

が渦巻いています。

結衣はチーフとなり、
「チーム全員を毎日、定時で帰らせる」という無謀にも思える目標を掲げます。

しかし、現実はそんなに甘くありません。


読んでいて「しんどい」と感じる理由

この物語、正直に言うと、
読んでいると、自分の職場や過去の経験が重なって、つらく感じる瞬間もあります。

  • なぜ休まないの?
  • なぜ断れないの?
  • なぜそこまで仕事を優先するの?

と思う場面が何度も出てきます。

でも、それはきっと、
自分の職場や、自分自身を重ねてしまうから。

誰もが一度は、

  • 無能な上司に振り回され
  • 空気を読んで残業し
  • 「自分がやらなきゃ」と抱え込み

そんな経験をしてきたはずです。

この本は、その現実を、容赦なく、でも丁寧に描いています。


この本は誰におすすめ?

残業が当たり前の職場で働いている人

  • 定時で帰ると白い目で見られる
  • 有給が取りづらい
  • 忙しさを理由に人が増えない

そんな環境にいる人には、かなり刺さります。

「残業するのが偉い」という価値観が、
どれほど人を壊していくのかを、物語ははっきり示してくれます。


真面目で、頑張りすぎてしまう人

三谷や晃太郎の姿は、
真面目で責任感が強い人ほど苦しくなることを教えてくれます。

  • 断れない
  • 任されるとやってしまう
  • 休むことに罪悪感がある

そんな人ほど、この物語は他人事ではありません。


管理職・チームリーダーの立場にいる人

結衣は理想論だけでは動きません。

  • 見積もりの交渉
  • 業務の切り分け
  • 人材の育成
  • 上司への直談判

現実的で泥臭いマネジメントが描かれています。

「人を守る立場」の人ほど、考えさせられる場面が多いです。

働き方や生き方に悩む物語としては、有川浩さんの
『フリーター、家を買う。』
もオススメです。
仕事に挫折しながらも、自分の居場所を探していく姿が印象的な一冊です。


どんな気分・どんなシーンで読みたい?

  • 仕事に疲れて帰った夜
  • 休日なのに仕事のことが頭から離れないとき
  • このままでいいのか、ふと不安になったとき

一気読みするというより、
「今の自分」に重ねながら、ゆっくり読むのがおすすめです。


ネタバレを抑えて語る、この作品の魅力

夜中まで会社に残って仕事しているイメージ画像

「定時で帰る」は、覚悟のいる選択

結衣は、ただ早く帰りたいわけではありません。

定時で帰るために、

  • タスクを細かく区切る
  • 時間を見える化する
  • メールは短く、要点だけ
  • 無理な仕事は受けない

などたくさんの努力をしています。

定時で帰ることは、逃げではなく、仕事の質を高める行為。

その姿勢が、とてもリアルで説得力があります。


本当に怖いのは「仕事中毒」

作中で印象的なのが、
インパール作戦になぞらえた描写。

敵より怖いのは、
無能な上司と、善意で突き進む人たち。

「寝なくても人は死なない」
「みんなやっているから」

そんな言葉が、どれほど人を追い詰めるかが描かれます。


仕事も大事。でも、人生はもっと大事

この物語が一貫して問い続けるのは、

何のために働いているのか。

会社のため?
評価のため?
誰かに認められるため?

それとも、自分の人生のため?

答えを押し付けず、
読者自身に考えさせてくれるところが、この作品の優しさです。


読後に得られる気づき・変化

この本を読み終えたあと、

  • 定時で帰ることに少し勇気が持てる
  • 無駄な残業を見直したくなる
  • 「自分を大事にしてもいい」と思える

そんな小さな変化が、確実に起こります。

働き方改革という言葉よりも、
もっと個人的で、もっと切実な問題として心に残ります。


正直な感想として

私は、
「絶対にこんな職場では働けない」
と、何度も思いました。

でも同時に、
「どこかで見た風景だな」とも思った。

だからこそ、この物語はリアルで、重くて、でも価値がある。

結衣は完璧なヒーローではありません。
迷い、揺れ、追い込まれます。

それでも「定時で帰る」を手放さなかった。

その姿は、
今の社会で働く多くの人にとって、
結衣の姿に、『それでもいいのかも』と思わされる人は、きっと多いと思います。


まとめ:残業が当たり前だと思っている人へ

『わたし、定時で帰ります。』は、

  • 残業文化
  • 同調圧力
  • 仕事と人生の境界

に疲れた人の心を、そっとほどいてくれる一冊です。

仕事は大事。
でも、命より大事な仕事はない。

会社のために自分があるんじゃない。
自分のために会社がある。

その当たり前を、
物語として、ちゃんと胸に届けてくれる作品でした。

「この本、今の自分に必要かも」

そう感じたなら、
きっと、読むタイミングです。


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