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『近畿地方のある場所について』が怖い|ネット発・断片系ホラーの傑作レビュー

『近畿地方のある場所について』の書影と心霊スポットを想起させる暗い風景のイメージ 本の紹介

1. 実話のような怖さが魅力のホラー作品

ホラーが好きな人なら、一度は「これ、実話なんじゃないか?」と思う作品に出会ったことがあるのではないでしょうか。今回紹介するのは、まさにそのタイプ。近畿地方の“ある場所”を舞台にした、じわじわと広がる恐怖を描いたホラー作品です。

舞台となるのは、山やダムといった自然の力が強く感じられる土地。普段はホラーに強い人でも、「土地そのものが持つパワー」を描いた怪談には、不気味さを感じるのではないでしょうか。

2. ネット発の断片情報がつなぐ“怪異”の全体像

この作品は、ひとつの整った物語というよりも、雑誌の投稿記事、ネット掲示板の書き込み、YouTubeの突撃レポート、インタビューの書き起こしなど、さまざまなメディアを通して“断片的に”語られます。

最初はバラバラに思えた話が、読み進めるにつれてじわじわとつながりを見せてくる。その構成がとても現代的でリアルに感じられます。まるで自分自身が掲示板を読み漁って怪異を調査しているような気分になります。

3. 怖さの質がリアルで静か

この作品の怖さは、「驚かせる」よりも「気づかせる」タイプ。突然の霊や叫び声ではなく、静かに忍び寄ってくるような怖さです。

物語の中で何度も出てくる「見つけてくださってありがとうございます」という言葉には、読者の想像力をかき立てる不気味さがあります。

怪異に関わった人々が徐々に変化していく様子、正体不明のまま広がっていく呪いのような現象。これらが淡々と語られていくことで、リアリティが増し、逆にとても怖いのです。

4. “語ること=呪いの拡散”という構造

この物語の中で印象的なのが、「語ること=呪いの拡散である」というテーマです。SNSやネット掲示板など、無責任な拡散が日常的に行われている今の時代。情報が拡散することで何かが広がってしまうという恐怖は、とても現代的です。

だからこそこの作品は、“今読むべきホラー”として成立しているとも言えるでしょう。

5. どんな人におすすめか

この作品は以下のような読者にぴったりです:

  • 実話っぽい怪談やネット発の不気味な話が好きな人
  • 都市伝説やモキュメンタリーが好きな人(例:『放送禁止』シリーズ、『残穢』など)
  • 派手なオチよりも、点と点を自分でつなぐ“考える怖さ”を味わいたい人

6. どんな気分のときに読みたいか

  • 日常に“非日常”を感じたいとき
  • 静かな夜に、じわじわと怖さを感じたいとき
  • 集中してじっくり読める時間があるとき

7. 感想と読後の余韻

一話一話は短くテンポが良いので、つい次の話へと読み進めてしまいます。最初はバラバラに見える情報が、後半で時系列やつながりを持って現れてくる構成も秀逸。

全体として起承転結が明確ではなく、淡々と証言や投稿が続いていくスタイルだからこそ、“現実に起こりそう”な不気味さがあります。

怪異の原因らしきものには少し触れられますが、完全な解決には至らない。だからこそ、物語が終わっても「近畿地方のある場所」では、今もなお怪異が続いているような余韻が残ります。

気になった方はこちらからチェックしてみてください。

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近畿地方のある場所について 
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