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『クジラの彼』有川浩|自衛隊×恋愛の短編集が面白い!恋愛小説に飽きたあなたへ贈る、ちょっと特別な6つの物語

有川浩『クジラの彼』の表紙。水色のグラスの中に浮かぶ潜水艦と、周囲に舞う蝶や鳥が印象的。幻想的なビジュアルで、自衛隊員と恋人たちの特別な恋を描く短編集を象徴している。 有川浩

1. 自衛隊×恋愛という異色のテーマが、驚くほどリアルで心に沁みる

「恋愛小説はもう読み尽くした」 「いつも似たような展開ばかりで新鮮味がない」 そんなふうに感じている人にこそ、ぜひ手に取ってほしいのが、有川浩さんの短編集『クジラの彼』です。

この作品の最大の魅力は、自衛隊という特殊な職業のリアルな日常と、そこに生きる男女の恋愛を、ユーモアと切なさを織り交ぜて描いている点。

単なるラブストーリーではなく、“会いたくても会えない”“どこにいるかも分からない”“命に関わる仕事”という現実が背景にあるからこそ、登場人物たちの「好き」という気持ちがまっすぐ胸に届いてきます。

読んでいる途中、ふと「わたしなら耐えられるだろうか」と考えてしまいました。 それでも、彼らはそれぞれの形で「想い」を信じ、前に進んでいくんです。 そんな姿に胸が熱くなりました。

2. 6つの恋物語、それぞれが全く違う味わい

この短編集には6つの物語が収録されています。どれも自衛隊に関わる仕事に就いている人たちの恋を描いていますが、それぞれの状況やキャラクターがまったく違うので飽きることがありません。

「クジラの彼」

海上自衛隊の潜水艦乗りとの恋。合コンで出会い、付き合い始めたけれど、彼がどこにいて、いつ帰ってくるかも分からない。会えない時間が長すぎて、自分の気持ちすら分からなくなる。 それでも「好き」と信じる強さが切なくて、読んでいて胸がぎゅっとなります。

「ロールアウト」

航空自衛隊の輸送機設計に関わる、女性開発者と男性隊員の話。個室トイレの必要性をめぐる真剣なプレゼンと恋模様。 「安心できる環境が仕事の質を左右する」――そんな当たり前のことすら難しい現場。リアルな葛藤と、仕事を通じて惹かれ合う2人の距離感が心地よいです。

「国防恋愛」

女性自衛官(WAC)の彼女と、同期の三曹との長い長い“未満関係”。信頼が深すぎるがゆえに恋愛に踏み込めない葛藤。 「壊したくない大事な関係」がある人には、きっと刺さるストーリーです。

「有能な彼女」

「クジラの彼」のサイドストーリー。彼女があまりに有能で、自衛官の彼氏は劣等感を抱えてしまう。それでも喧嘩を繰り返しながら、本音をぶつけ合うことでつながる関係に。 結婚って何だろう?支えるってどういうこと?と、考えさせられます。

「脱柵エレジー」

たった数日会えないだけで壊れてしまいそうな恋心。その思いが爆発して、ついには“脱柵”してしまう彼。 愛とは、自由とは、責任とは――ユーモアがありながらも、じんわり考えさせられる作品です。

「ファイターパイロットの君」

保育園児の茜ちゃんが、「ママは飛行機と私、どっちが大事なの?」とパパに問いかける物語。
不安を抱えながらも、子どもながらにママの仕事のカッコよさをちゃんと分かっているところに心が打たれました。
家族って、こうやって支え合ってるんだな…と、思わず涙ぐみました。

3. 自衛官の恋愛がこんなにも切なく、面白いとは

どの物語も共通しているのは、「恋愛の相手が自衛官」であること。 つまり、仕事の内容が過酷であるのはもちろん、会えない、話せない、居場所も分からない――という特殊な制限があるということです。

それでも登場人物たちは、その“どうしようもなさ”を受け入れて、関係を築こうとします。

これはフィクションですが、すごくリアル。 自衛官という職業の現実を知るきっかけにもなりますし、同時に「恋愛に大切なのは会う回数じゃなく、心が通じ合っているかどうかなんだ」と教えてくれるようでもあります。

読みながら、わたしも「連絡が取れなくなっても、信じ続けるってできるかな……」と、何度も考えました。

4. 自衛隊三部作との繋がりも発見あり!

驚いたのは、「クジラの彼」と「有能な彼女」が、有川浩の『海の底』の番外編であり、「ファイターパイロットの君」が『空の中』の番外編であるということ。 すでに読んでいる人は、「あのキャラがこんな風に恋愛してたのか!」と嬉しい発見があるはず。

本編をまだ読んでいなくてもまったく問題ありません。 この短編集をきっかけに、『海の底』『空の中』を読みたくなる人も多いはず。 わたし自身、本編である『海の底』や『空の中』も読んでみたくなりました。

5. 読み終えたあと、大切な人に連絡したくなる

全編通して、笑える場面も多いのに、どこか胸がじんわり温かくなって泣けてしまう。 「不器用でもいい」「ちゃんと伝えるって大事なんだ」 そう思わせてくれるストーリーたちです。

読み終えたあと、ふと大切な人の顔が浮かんで、静かに優しい気持ちになれる一冊でした。

「今、そばにいる人を、もっと大事にしよう」 そんな気持ちを、そっと後押ししてくれます。

6. こんな人におすすめ!

  • 普通の恋愛小説ではもう満足できない人
  • 遠距離恋愛に悩んでいる人
  • 仕事と恋愛のバランスにモヤモヤしている人
  • 自衛隊やその家族のリアルに興味がある人
  • 大切な人と過ごす日々をもっと大事にしたいと思っている人

7. どんな気分のときに読んでほしい?

  • ふと「誰かを大事にしたい」と思ったとき
  • 心が疲れて、でも前を向きたいとき
  • 不器用な恋でもいい、まっすぐな気持ちに触れたいとき
  • 「本当に好きってどういうこと?」と考えたくなったとき

読み応えがありながらもサクッと読める短編集。 ちょっと変わったラブストーリーが読みたいとき、自衛隊という舞台が舞い降りた最高の1冊になるかもしれません。

ぜひこの本を読んで、「あなたの大切な人」を思い出してみてください。 そして、気になったら本編の『海の底』や『空の中』にもぜひ。

気になった方はこちらからチェックしてみてください。

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