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SNSでのふとした出会いから手に取った、木塩鴨人さんの短編集『月がある』。
本作は、「孤独」や「人との距離感」に悩みながら生きる人たちの姿を、
静かで誠実な筆致で描いた3つの物語からなる作品です。
1日1冊の読書を続ける中で、筋金入りの人見知りである私自身、
ページをめくりながら自分の記憶の奥をそっと撫でられるような感覚を味わいました。
人間関係の難しさや、誰かと繋がることの痛みに寄り添ってくれる一冊です。
『月がある』とは?(作品の背景と出会い)
SNSを眺めていたある日、ふと目に飛び込んできた一つの投稿がきっかけで、
本作『月がある』を知りました。
言葉の端々から伝わる温もりや誠実さに惹かれ、すぐさま読んでみることに。
本を読み終え、あとがきを開いたとき、
作者の木塩鴨人さんが末期がんと向き合いながらこの物語を紡がれたことを初めて知りました。
驚きとともに、今この時期にこの物語に出会えたことへの深い感謝が、
胸に静かに広がっていきました。
本作を貫くテーマは「孤独」と「人との距離感」です。
作者ご自身が学生時代に本に救われた経験が、物語の中にそっと織り込まれています。

学生の時いじめられてた
から気持ちわかるな。
2. 各短編のあらすじと魅力

本作に収録されている3つの短編について、それぞれのあらすじと見どころをご紹介します。
2-1. 月がある
主人公の野村君は、小さな頃から友達ができにくく、家庭環境にも恵まれない少年です。
学校でも孤立する彼にとって、唯一心安らぐ「避難所」は図書室でした。
本を開けば、現実の孤独を忘れて物語の仲間たちと過ごすことができます。
小学6年のある日、本や星の話で盛り上がれる初めての友人が現れます。
しかし、その関係を大切に思うあまり、無意識のうちに相手との距離感を間違えてしまい……。
【感想】 「人との距離の取り方」という普遍的なテーマが、繊細かつリアルに描かれています。
相手を思うがゆえの「友達誓約書」に込められた必死さと切なさに、胸が締め付けられました。

相手のこともちゃんと
考えれないとだね。
2-2. PARADISE
高校のサッカー部Bチームに所属する雅人は、周囲への気遣いを忘れない優しい性格の持ち主。
ある試合で仲間を守るために体を張ったことで尊敬を集めますが、
ある出来事をきっかけに、人知れず抱えてきた秘密を打ち明けることになります。
【感想】 物語の中で、荒れた海を進む「難破船」になぞらえた印象的な場面が登場します。
その船が無事にたどり着けるのかは誰にもわかりませんが、
行く末を案じ、無事を祈る気持ちは誰もが持っているもの。
「救うことはできなくても、隣にいることはできる」という静かな希望が描かれた傑作です。

僕は何回も沈没してます。
2-3. 半券
20歳の大学生のとき、主人公は北海道の岬を目指す過酷な旅に出ます。
孤独な旅路の途中で、学生時代から自分の心に寄り添ってくれた
文学者(啄木や太宰)と向き合います。
時が流れ、57歳になり直腸がんステージ3と診断された主人公。
身の回りを整理していると、当時の乗車券の「半券」が出てきて……。
【感想】 若き日の泥臭い旅の記憶と、1枚の半券。
それが年月を経ても「確かに自分が生きてきた証」として
主人公の手のひらに温もりを取り戻させる描写は、涙なしには読めません。

経験や思い出が人生には
一番価値があるのかもね。
3. 心に残る言葉と読後の気づき

読み進める中で、自分自身の過去や人との関わり方を
思い返させるような気づきが多くありました。
- 誰かが隣にいるだけで、人は救われる
- 孤独や違和感を抱えているのは、自分だけではない
- 相手を直接「救う」ことは難しくても、「寄り添う」ことはできる
- 小さな物や記憶(半券など)が、自分の存在を証明してくれる

僕もご飯食べて寝ているだけだけど
一緒にいるだけで幸せでしょ。
4. この本はどんな人におすすめ?
『月がある』の登場人物たちが抱える痛みは、現実の私たちと地続きです。
特に以下のような方に、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。
- 子どもの頃から「人との距離感」がうまく掴めなかった人
- 家庭や学校、社会での居場所を見つけにくかった人
- 誰かとの繋がりを求めつつも、怖さやためらいを感じてしまう人
- 人間関係に疲れて、少し距離を置きたくなった夜
- 病や老いなど、人生の転機に向き合っている人
10代から大人まで幅広く響く内容ですが、
特に30〜50代で自身の過去や人生を振り返る時期にある方には、深く心に沁みるはずです。
こちらもおすすめです。
同じく“孤独”や“他者との距離”をテーマに描いた作品、住野よるさんの『よるのばけもの』もおすすめです。夜の学校で繰り広げられる不思議な物語が、思春期の心の揺れや人間関係の痛みを鋭く映し出します。こちらの感想もぜひどうぞ。
まとめ――本がくれる「隣にいる」という救い
『月がある』は、派手な展開こそないものの、
読み終えたあとに心の奥底に静かな波紋が広がる誠実な物語集です。
木塩鴨人さんは末期がんと向き合いながら、この優しい物語を残してくれました。
この本を手に取ることで、あなたの心にも「思い浮かぶ誰か」が現れるかもしれません。
その人が今もどこかで、無事にたどり着けていることを祈りたくなる。
そんな温かい気持ちにさせてくれる一冊です。

僕が一緒にいるから安心してね。

そんなこと言ってベッドの下とか
押し入れとかに隠れて寝ないでよ。
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