母になるという覚悟が、ここまで人を変えるのか――秋吉理香子『聖母』感想

本の紹介

◆ 静かに始まり、確実に深く──息が詰まる読書体験

秋吉理香子『聖母』は、ある幼稚園児の遺体発見から物語が始まるサスペンス小説です。
最初は静かに、淡々と描かれていくのに、ページをめくるごとに胸がざわつき始め、読者は気づけば後戻りできない闇の奥へと引き込まれていきます。

物語全体に張り詰めるのは、母親という存在が持つ“直感”や“覚悟”のようなもの。
男親の私には想像しきれない、その強さと切実さに圧倒されました。


◆ 3つの視点が少しずつ交差していく構成の妙

物語は、以下の3人の視点で展開されていきます。

  • 幼児への暴行事件を追う刑事
  • 不妊治療の末に娘を授かった母・保奈美
  • どこか影を持つ高校生・真琴

それぞれがまったく異なる立場から「ある出来事」に向き合い、少しずつ交差していく構成が非常に巧み。序盤は断片的だった出来事が、中盤以降、ゆっくりと“つながり始める”過程が読んでいてとてもスリリングです。


◆ 「ラスト20ページで一変」の意味

帯にあった「ラスト20ページで一変」という言葉。
読了後、その意味を痛いほど実感しました。あえて詳しくは書きませんが、「最後に明かされる“ある事実”」に、思わずページを戻したくなるほどの衝撃を受けます。

それまでに感じていた感情や視点がガラリと変わる。まさに、秋吉理香子さんの真骨頂です。


◆ 読み終えたあとに残る、“母”という存在の重み

この作品は事件の真相以上に、「母とは何か」「守るとはどういうことか」という問いを突きつけてきます。
そして、“覚悟”という言葉の本当の意味を、静かに、でも深く考えさせられます。


◆ まとめ:読むには勇気がいる。でも読む価値がある

日常に潜む異常。その中で、人は何を選び、どう生きるのか。
子どもを持つ方にとっては、読んでいてつらい場面もあるかもしれません。
でも、それでもなお、この本が描く「母の愛と強さ」は、確かに胸に残ります。

心を揺さぶる物語を求めている方に、ぜひ手に取ってほしい一冊です。

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