2025-05

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綿矢りさ『かわいそうだね?』感想・あらすじ|女のもやもや短編集

1. 『かわいそうだね?』綿矢りさ|あらすじと感想レビュー『かわいそうだね?』は、綿矢りさによる恋愛と人間関係の繊細な心理描写が光る短編集です。表題作「かわいそうだね?」を含む二篇は、どれも女性視点での複雑な感情、恋愛、友情、そして“かわい...
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占いがテーマの癒し小説『強運の持ち主』瀬尾まいこ感想

占いは人生相談?『強運の持ち主』が教えてくれる、前に進むための優しいヒント1. 占い=特別?そんな思い込みがふっと軽くなる「占い師って神聖で特別な人」——そんなイメージを抱いていた私が、本書『強運の持ち主』を読んで最初に笑ってしまったのは、...
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地方と移住をテーマにした米澤穂信の社会派ミステリを読む

『Iの悲劇』レビュー|地方再生と人口減少のリアルを描く社会派ミステリ1. 地方創生をテーマにした社会派小説『Iの悲劇』とは『Iの悲劇』は、米澤穂信による社会派ミステリ小説であり、限界集落の再生をテーマにした作品です。舞台は架空の町・南はかま...
幸田真音

幸田真音『人工知能』感想|制御不能な車が突きつける技術の限界

1. 中国と日本のAI事情の違い近年、人工知能(AI)の進化はめざましく、特に中国ではそのスピードが異常ともいえるほど速い。監視カメラや顔認証技術、AIによるビッグデータ解析など、人権やプライバシーを犠牲にしてでも技術を前進させている姿勢は...
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『だから荒野』感想|家出した主婦がたどり着いた自由のかたち

46歳の誕生日。専業主婦・森村朋美は、自ら新宿のレストランを予約し、家族とのささやかなひとときを楽しみにしていた。しかし、家を出る前から雲行きは怪しい。高校生の次男は「行かない」と不機嫌にごね、夫と大学生の長男は「お酒を飲みたいから運転して...
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『十角館の殺人』綾辻行人|ミステリー初心者に人気の理由とは?

1. 読む前に少しだけ迷っていたミステリーにちょっと興味があるけど、有名作って難しそう。そんな風に感じたこと、ありませんか?私も『十角館の殺人』を手に取る前はそうでした。「古典的すぎるのでは?」「登場人物が多くて混乱しないかな…?」そう思い...
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『新しい法律ができた』が面白すぎて、自分でも書いてみました

1. 「新しい法律ができた」──贅沢なショートストーリー集タイトルに惹かれて手に取った一冊、『新しい法律ができた』。この本には、25人の作家によるショートストーリーが収められており、すべての話が「新しい法律ができた」から始まるという、なんと...
小川哲

クイズの面白さを体感できる物語『君のクイズ』(小川哲)

1. クイズ=娯楽?それだけじゃなかった「クイズ」と聞くと、テレビのバラエティ番組で楽しむ軽い娯楽、というイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。けれど、『君のクイズ』(小川哲)を読み終えたとき、私はその認識が大きく覆されました。...
高瀬隼子

押しつけの優しさがつらいときに読む『おいしいごはん』

『おいしいごはんが食べられますように』感想・レビュー目次ごはんが「雑に扱われる」珍しい小説善意や親切が誰かを追い詰めることもある丁寧な暮らしと、疲れきった日々のギャップ食べることに無関心でも、この物語は刺さる押しつけられる“正しさ”への違和...
チョ・ナムジュ

“女性だから”を背負わされる理不尽に気づく読書体験

はじめに:ディストピアではなく「現実」の物語『82年生まれ、キム・ジヨン』を読み終えたとき、まず思ったのは、「これはフィクションという形をとった現実だ」ということ。まるでディストピア小説のような世界。でも描かれているのは、私たちが今まさに生...
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『傲慢と善良』感想|誰かを選べない、選ばれない人へ贈る一冊

目次はじめにあらすじ(ネタバレなし)心をえぐる問い:なぜ人は誰かを選ぶのか「傲慢」と「善良」が同居する現代感情の延長ではなく、人生の選択としての結婚自分軸を持つということまとめ:苦しさの中に、確かな希望がある物語1. はじめに辻村深月さんの...
山本文緒

『無人島のふたり』がくれた、生きる意味と静かな覚悟

目次はじめに膵臓がんステージ4——日々が「最後」になる「うまく死ねますように」に込められた祈り書くことを最後まで手放さなかった作家の魂残される人への想い読後に残ったもの——人生の問いと行動への決意おわりに1. はじめに『無人島のふたり』は、...
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英語初心者でも読めた!挫折せずに読了できる『ロビンソン・クルーソー』レビュー

目次はじめに:英語の本を読むのは難しい?『ロビンソン・クルーソー』を選んだ理由実際に読んでみて:英語は難しかった?どんなストーリー?ざっくりあらすじラダーシリーズの魅力感想と気づき英語学習法としての多読まとめ1. はじめに:英語の本を読むの...
山崎豊子

『沈まぬ太陽 アフリカ篇 上』山崎豊子|理不尽と闘う信念の物語

目次はじめに労働組合の闘士・恩地元の姿報復人事という現実なぜ辞めないのか?恩地の葛藤航空会社の裏側と組織の闇夫婦の絆と孤独な戦い最後に:名作の持つ力1. はじめに山崎豊子による社会派小説『沈まぬ太陽』の第一巻「アフリカ篇・上」を読み終えまし...
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その食欲、実はタンパク質不足かも?『食欲人』でわかる食べすぎの理由と対策

目次はじめに食後にお菓子が欲しくなる理由バッタも実験対象!?タンパク質の重要性食欲の本当の目的食環境と私たちの選択無理をしない、でも知っておきたいまとめ──「賢い食事」のために1. はじめに図書館のおすすめ棚で出会った『食欲人』。タイトルに...
小寺無人

「アガシラと黒塗りの村」|古文書と伝承が導く田舎ミステリー

大学時代の親友からの一本の連絡がきっかけだった。舞台は巨人伝説が残る因習深い村。土砂崩れで現れた古文書、その解読のために村を訪れた青年・黒木は、やがて不可解な連続殺人事件に巻き込まれていく。青春、民俗学、そして謎解きのスリル。『アガシラと黒...
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人生に迷ってる人はこの本を読んで。心に火をつけてくれる『くもをさがす』西加奈子

目次はじめにカナダでの闘病とユーモア恐怖と孤独、そして人とのつながり医療の違いに見る文化文章がくれる「疑似体験」の力生き方を見つめ直すきっかけにおわりに1. はじめに西加奈子さんの『くもをさがす』を読了しました。カナダ滞在中に乳がんと診断さ...
中脇初枝

沖永良部島の歴史と文化を知り、今を生きる知恵を得る一冊『神の島のこどもたち』

『神の島のこどもたち』は、前作『神に守られた島』の7年後を描いた物語です。この本は、沖永良部島の島民たちがアメリカ統治下から日本復帰へと向かう過程を描いており、その過程で感じられる島民の強い決意や歴史を大切にする姿勢が心に響きます。前作『神...
中山七里

正義を決めるのは誰か?裁判の未来を描く小説レビュー

【読了感想】『有罪、とAIは告げた』──AI裁判官と人間の正義の境界を考える1. AI裁判官がもたらす未来とは?AIが司法の現場に導入される──そんな未来はもうすぐそこまで来ています。『有罪、とAIは告げた』では、中国との技術交流の一環とし...
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島の歌と涙—沖永良部島の戦時中の暮らし『神に守られた島』

『神に守られた島』読了レビュー目次沖永良部島の戦時中の暮らし迫り来る戦争の現実逆境の中での優しさと希望戦争とその影響終戦後の気づきと感想1. 沖永良部島の戦時中の暮らし『神に守られた島』は、戦時中から終戦直後までの沖永良部島の人々の暮らしを...
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『絶対正義』感想|正義を振りかざす怖さに震える小説【秋吉理香子】

『絶対正義』読了。正しさは人を救うか、それとも追い詰めるのか目次範子という存在がもたらす恐怖「正義」は誰のためにあるのかSNS社会とのリンク読後に残るモヤモヤと問いまとめ:正義とは何か1. 範子という存在がもたらす恐怖秋吉理香子さんの小説『...
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映画みたいに面白い!シドニィ・シェルダンの新・代表作

『異常気象売ります(下)』#読了レビュー📘 上巻のレビューは こちらから読めます。奇跡の連続が織りなす、息もつかせぬ展開。全ページがクライマックス!目次作品概要物語の魅力ケリーとダイアンの関係性スリリングな展開と黒幕異常気象というテーマ読後...
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【超訳で読みやすい】『異常気象売ります』は翻訳初心者にもおすすめの一冊!

『異常気象売ります 上 』#読了レビュー作品概要と読後の印象シドニィ・シェルダン原作の超訳サスペンス『異常気象売ります』を読了しました。テンポよく展開するストーリーと、魅力的なキャラクターたちに引き込まれ、一気に読み終えてしまいました。まさ...
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「自己責任」じゃ片づけられない現実が、ここにある。

読むだけで「人を助けたくなる」気持ちが芽生える『夜が明ける』感想レビュー子どもの貧困やネグレクト、ジェンダー、売春、ブラック企業、奨学金……現代日本が抱える多くの問題をリアルに描き出した一作。「自己責任」という言葉の怖さを知り、誰かに頼って...
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不幸も笑いに変える、こだまさんの心温まる旅日記

こだまさんのユーモアが心に染みる、旅のエッセイ『縁もゆかりもあったのだ』は、こだまさんのエッセイです。この本を手に取ることで、日常の小さなハプニングに笑い、旅の中で気づく「縁」や「つながり」に温かさを感じることができます。旅のエッセイとして...
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隣の芝生が青く見えるあなたへ──『誰かが見ている』感想

誰かの家庭が完璧に見えて、つい自分と比べてしまうことはありませんか?そんな人にぜひ読んでほしいのが『誰かが見ている』です。家庭や育児の“見えない部分”にそっと光をあててくれるこの物語は、他人と比べることで苦しくなってしまう私たちの心を、じん...
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怖いものに触れたいあなたへ。『残穢』が明かす、呪いの真実とは

「残穢」—不思議な音に隠された恐怖の真実あなたの家でも不安な音が聞こえたことがあるなら、この本を読んで、さらに恐怖を感じることになるかもしれません。『残穢』は、そんな日常の中に潜む「穢れ」や呪いの連鎖を追いかけ、徐々にその恐怖が明らかになっ...
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悲しみを閉じて、未来へ歩く――『すずめの戸締まり』に心を救われた。

その悲しみは、未来を守る力になる――『すずめの戸締まり』読了感想※本記事には一部ネタバレを含みます。未読・未視聴の方はご注意ください。心に傷を抱えるすべての人へ震災で大切な人を失ったことのある人、災害を“他人事じゃない”と感じたことがある人...
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『ガリバー旅行記』はなぜ読みづらい?背景知識の罠

背景を知らずに読むのはもったいない。『ガリバー旅行記』で気づいた、寓話の深み英語初中級者向けのラダーシリーズLevel 2。でも、なぜか他の本よりも難しく感じる。そう思ったことはありませんか?今回紹介するのは、簡単なはずなのに読み応えがあっ...
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『名探偵じゃなくても』──謎を解くたび、別れが近づいていく

認知症と向き合う名探偵が、今日も謎を解く。ただの“お涙ちょうだい”では終わらない、知的であたたかなミステリー。「名探偵のままでいて」の続編を読んで、優しさと切なさに包まれました。忘れてしまう前に、伝えたいことがある『名探偵じゃなくても』は、...
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「情けない自分」を卒業したくなる本。『フリーター、家を買う。』が教えてくれた再出発の力

家族に何ができる?——『フリーター、家を買う。』は今を生きる人に効く再生の物語親との関係に悩んでいる人、人生に行き詰まりを感じている人にこそ読んでほしい一冊。どん底から少しずつ光を取り戻していく様子に、きっと自分の未来も信じたくなる。弱さを...
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本を開いた瞬間、劇場へ──読むシェイクスピア入門書

演じるって、こんなに自由だったんだ──『14歳のためのシェイクスピア』を読んで、演劇が「体験」になった。シェイクスピアに「難しそう」「古くさそう」というイメージを持っている人へ。この本は、そんなあなたの固定観念を心地よく揺さぶってくれます。...
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和菓子の奥深さに魅せられて—『和菓子のアン』

『和菓子のアン』の魅力『和菓子のアン』は、デパ地下の和菓子屋で働くアンちゃんを主人公にした物語です。和菓子が持つ奥深い意味や背景を通じて、普段あまり和菓子に興味がない人でもその魅力に気づける、心温まる小説です。和菓子がどうやって人々の心に寄...
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高校生が見た“最前線”――戦争に巻き込まれた家族の記録

「ウクライナにいたら戦争が始まった」「戦争は遠い国の話」と思っている人にこそ読んでほしい一冊。突然、非日常に放り込まれた家族の視点から、"市民が戦争に巻き込まれる現実"をリアルに体感できます。今ある平和がどれだけ脆くて、ありがたいものかを深...
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いじめられても、生き延びて。『よるのばけもの』が教えてくれた、ほんの少しの自由

『よるのばけもの』読了レビュー|思春期の「正しさ」と「怖さ」に向き合う夜・いじめや人間関係に悩む学生に寄り添う物語。・傍観者だった自分を見つめ直すきっかけになる。・誰もが持つ「多面性」と「想像力」について考えさせられる。いじめられている女の...
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青春を取り戻す一冊『天気の子』が教えてくれる、忘れかけた情熱と選択の代償

『小説 天気の子』は、家出した少年・森嶋帆高と、天気を自由に操る力を持つ少女・天野陽菜の物語です。帆高は家出をして東京に辿り着き、陽菜という「晴れ女」と出会います。陽菜は、祈ることで天気を晴れにすることができ、二人はその特別な力を活かして「...
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母になるという覚悟が、ここまで人を変えるのか――秋吉理香子『聖母』感想

◆ 静かに始まり、確実に深く──息が詰まる読書体験秋吉理香子『聖母』は、ある幼稚園児の遺体発見から物語が始まるサスペンス小説です。最初は静かに、淡々と描かれていくのに、ページをめくるごとに胸がざわつき始め、読者は気づけば後戻りできない闇の奥...