目次
- はじめに
- 労働組合の闘士・恩地元の姿
- 報復人事という現実
- なぜ辞めないのか?恩地の葛藤
- 航空会社の裏側と組織の闇
- 夫婦の絆と孤独な戦い
- 最後に:名作の持つ力
1. はじめに
山崎豊子による社会派小説『沈まぬ太陽』の第一巻「アフリカ篇・上」を読み終えました。JAL(日本航空)をモデルとしながら、主人公・恩地元(おんちはじめ)が企業組織という巨大な力といかに闘うかを描いたこの作品は、読者に深い衝撃を与えてくれます。まさに「今世紀最後の傑作」という言葉にふさわしい、重厚な一冊です。
2. 労働組合の闘士・恩地元の姿
物語の前半では、労働組合の委員長として、社員の正当な権利を守るために社長や幹部と激しい交渉を繰り返す恩地の姿が描かれます。ストライキも辞さないその姿勢に、「そこまでするのか?」と驚きながらも、彼の誠実さと信念に胸を打たれます。会社の論理ではなく、「人」の側に立って考える彼の行動は、現代にも通じる普遍的なテーマです。
3. 報復人事という現実
しかし、組合委員長の任を降りた瞬間、恩地を待っていたのは想像を超える「報復人事」。突然のカラチへの異動です。以降、恩地は日本から遠く離れた中近東・アフリカを転々とすることになります。これは単なる左遷ではなく、企業による「見せしめ」であり、「組織ぐるみの追放」でした。
4. なぜ辞めないのか?恩地の葛藤
ここで読者が気になるのが、「なぜ恩地は会社を辞めないのか?」という点です。家族を持つ身であることや、当時の時代背景を考えると簡単には辞められないという事情もあるのでしょう。しかしそれ以上に、恩地の中には「自分を貫く」強い意志が見て取れます。時代や会社に抗う姿は、実直で誠実な人間がどれだけ苦境に立たされるのかを如実に示しています。
5. 航空会社の裏側と組織の闇
私たちが表で見る華やかな航空会社の姿。その裏側では、安全よりも出世や利権が優先される場面があり、企業がいかにして個人を飲み込むのかが克明に描かれます。恩地の冷遇は決して偶然ではなく、「逆らう者は排除する」という企業論理の象徴。この構図は現代の日本社会にも当てはまるのではないでしょうか。
6. 夫婦の絆と孤独な戦い
恩地の不器用さや世渡り下手な性格も印象的ですが、彼を理解し支え続ける妻の存在が、物語に人間味を加えています。家族と引き離され、孤独な土地で過ごす中でも、恩地の精神が折れないのは、妻や子の存在があるからこそ。孤独な戦いの中に、確かな「絆」が浮かび上がってきます。
7. 最後に:名作の持つ力
「正義」を貫くことが、どれほど苦しいことなのか。それでも信念を曲げない人間がいるという事実に、私は感動しました。恩地の姿は、読む者に勇気を与えてくれます。今後の展開がますます気になる、まさに読みごたえたっぷりの作品です。
続巻にも大いに期待しつつ、この一冊の余韻にしばらく浸りたいと思います。
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