大切な人を失ったあと、
人はどうやって日常に戻っていくのでしょうか。
理由も分からないまま別れが訪れたとき。
答えの出ない疑問が心に残ったままのとき。
前を向こうとしても、足が止まってしまうことがあります。
畑野智美さんの小説
『宇宙の片すみで眠る方法』 は、そんな心にそっと寄り添う物語です。
この本を読むと、
「すぐに立ち直れなくてもいいんだ」と思えます。
そしてもう一つ、意外な気づきもあります。
それは 眠ることの大切さ です。
枕やマットレスなど、寝具の仕事を通して、
主人公は少しずつ人生を取り戻していきます。
・大切な人を亡くした経験がある
・過去の出来事を引きずってしまう
・なんとなく心が疲れている
そんな人の気持ちに、やさしく届く物語です。
ゆっくりページをめくりながら、
自分の気持ちも少しずつ整っていく。
そんな読書時間をくれる一冊でした。
人生が急に変わってしまったとき

信じていた未来が、突然なくなってしまうことがあります。
この物語は、そんな出来事から始まります。
主人公の 沢村依里 は、デパートの寝具売り場で働く女性です。
彼女には結婚を約束した恋人、直樹がいました。
けれどある日、直樹はバス事故で亡くなってしまいます。
しかも、そのとき直樹は
依里の知らない女性と一緒にいたと分かります。
事故の知らせ。
突然の別れ。
そして残された疑問。
何が起きたのか分からないまま、
依里の人生は大きく変わってしまいます。
眠れなくなった彼女が、
偶然立ち寄ったのが寝具店でした。
泣きながら事情を話した依里に、
店長はやさしく接してくれます。
それがきっかけで、
依里は寝具売り場で働くことになります。
眠れない人が、眠りを売る仕事をする。
その少し不思議な始まりが、
この物語の静かな魅力になっています。

寝る時に猫は
いる派?いらない派?
寝具売り場の仕事が教えてくれること
この物語の面白さの一つは、
寝具の仕事がとても丁寧に描かれているところです。
枕一つでも、人によって合うものが違います。
・首の太さ
・肩幅
・頭の重さ
・寝る姿勢
それによって、
高さや硬さが変わってきます。
依里はお客様の体を見ながら、
合う枕を一緒に探していきます。
でも、必ずしも売れるとは限りません。
首が細いお客様に柔らかい枕をすすめても、
お客様は固い枕を選ぶこともあります。
それでも依里は、
無理に売ろうとはしません。
その人にとって良いものを考える。
それが依里の接客でした。
その姿勢が、
少しずつお客様の信頼につながっていきます。
・25年前の毛布を忘れられない人
・亡くなった夫を思い出す女性
・子どものベッドを選びに来た母親
寝具は、毎日の生活に寄り添うものです。
だからこそ、
そこには人それぞれの人生がある。
この仕事の描写がとてもリアルで、
読んでいると寝具を見直したくなるほどでした。

僕は誰のひざに乗るか
こだわっているよ。
同じ事故で大切な人を失った男性

依里の前に、ある男性が現れます。
高橋さん です。
彼は、直樹と同じバス事故で妻を亡くしていました。
偶然、寝具売り場のお客さんとして訪れた高橋さん。
そこから二人は、少しずつ会うようになります。
最初はぎこちない関係。
けれど、
同じ事故で大切な人を亡くした二人は、
自然と話をするようになります。
直樹のこと。
事故のこと。
そして、これからの人生のこと。
ただ、この関係は単純ではありません。
直樹は、
高橋さんの妻と一緒に温泉に泊まっていたのです。
浮気だったのか。
違ったのか。
本当のことは、
亡くなった人にしか分かりません。
この物語は、
その 答えの出ない気持ち をとても丁寧に描いています。
疑い。
怒り。
悲しみ。
そして、少しずつ前を向こうとする気持ち。
読んでいると、
依里の心の揺れがとてもリアルに伝わってきます。

隠れて猫カフェ行っても
バレてるからね!
働く女性のリアルも描かれている
この小説には、
女性が働く現実も描かれています。
デパートの売り場では、
売り上げを求められる場面もあります。
強引に売ろうとする上司。
無理な接客。
依里はそんな状況に戸惑いながらも、
自分のやり方を大切にします。
また、友人の璃子は婚活をしていたり、
清掃スタッフの早苗さんは離婚を経験していたり。
それぞれ違う人生を歩く女性たちが登場します。
読んでいると、
女性が生きていく難しさも見えてきます。
・仕事
・恋愛
・結婚
・将来
どれも簡単ではありません。
それでも、
みんな自分の人生を続けています。
その姿が、とても自然に描かれていました。

まだまだ社会にはいろんな
課題が残っているね。
誰におすすめの本か
この本は、こんな人におすすめです。
・20代〜40代の女性
・恋愛や人生に迷いを感じている人
・大切な人との別れを経験した人
・働く女性のリアルな気持ちに共感したい人
・心が少し疲れているときに読む本を探している人
また、こんな気分のときにもぴったりです。
・なんとなく眠れない夜
・人生について考えてしまうとき
・気持ちをゆっくり整えたいとき
激しい展開の物語ではありません。
でも、
心の奥に残る物語です。

落ち着いた
気分になるよ。
あわせて読みたいおすすめの小説
大切なものを失ったあと、少しずつ日常を取り戻していく。
そんな「再生」を描いた物語として、
瀬尾まいこさんの『幸福な食卓』もおすすめです。
『宇宙の片すみで眠る方法』が
「眠ること」で心を整えるお話なら、
『幸福な食卓』は「食べること」を通して前を向く力をくれる作品です。
どちらも、心が少し疲れたときに優しく寄り添ってくれますよ。
こんな時間に読むと心にしみる
この本は、落ち着いた時間に読むのがおすすめです。
例えばこんなとき。
・通勤電車の中で少しずつ読む
・夜、ベッドに入る前の読書時間
・休日のカフェでのんびり読む
・気持ちが疲れている日の夜
静かな物語だからこそ、
ゆっくり読める時間が合います。
読んでいると、
自分の人生のことも少し考えてしまいます。
でもそれは、
重い気持ちではありません。
少し心が整理されるような感覚でした。

この本はベッドの上で
読むのが最高だね。
読み終えたあとに残るもの
この本を読んで感じたのは、
人生には分からないことがたくさんあるということでした。
亡くなった人の気持ち。
あの日の出来事。
それはもう、
確かめることができません。
それでも、人は生きていきます。
ご飯を食べて。
仕事をして。
眠って。
少しずつ、
新しい毎日を作っていく。
依里がゆっくり前を向いていく姿を見て、
「人は少しずつ回復していくんだな」と思いました。
また、寝具の話もとても興味深かったです。
枕やマットレスの選び方など、
読んでいると自分の寝具を見直したくなります。
実際に、
私も読んでいる途中で枕を調べてしまいました。
肩や首の痛みの原因は、
もしかすると寝具かもしれません。
そんな気づきも、この本からもらいました。

寝転んで人に枕の角度
見てもらうのがいいよ。
読み終えて感じたこと
この物語には、
はっきりした答えはありません。
でも、
それがとても良いと思いました。
人生は、
いつもきれいに整理できるわけではありません。
それでも、
自分のペースで前に進めばいい。
そう思わせてくれる物語でした。
読みながら、
依里の迷いや悲しさに共感して少し苦しくなりました。
けれど物語の終わりに近づくにつれて、
私自身も前向きな気持ちになれました。
そして読み終えたとき、
「ゆっくりでも、生きていけばいいんだ」と思えました。
もし機会があったら、
私も沢村さんに寝具一式を選んでもらいたい。
そんなことを思いながら、
とても良い小説に出会えたと感じました。

今日もぐっすり
眠れそう。
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