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山田宗樹『存在しない時間の中で』レビュー|存在の意味を問う衝撃作

山田宗樹『存在しない時間の中で』書評|人類の存在を問う壮大なSF小説 山田宗樹
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この本で得られる体験

この作品は、次のような方に特におすすめです。

  • 難解なテーマでもエンタメとして楽しみたい読書好き
  • 宇宙や神の存在に関心を持つ哲学的な思考をする人
  • SFはちょっと苦手だけれど、人間ドラマがあれば読みたいという方
  • 新興宗教や群衆心理といった「人間の怖さ」に興味がある人
  • そして、「生きる意味」をどこかで探している人

また、山田宗樹さんの作品をこれまで読んできた方なら、間違いなく心に響くはずです。
社会性のあるテーマをエンタメとして描きながら、人間の心の奥深くを抉り出すその筆致。
そこに壮大なスケール感が加わることで、圧倒的な読書体験へと導かれていきます。

山田宗樹さんの他作品はこちら


あらすじの入り口

ホワイトボード 数式
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物語は、天山大学の研究機構「AMPRO」の一室から始まります。
ゼミの場に突如現れた謎の青年――通称「ガロアくん」。

彼は無言のままホワイトボードに23枚分もの数式を書き続け、去っていきます。
その数式は、宇宙が「高次元の存在によって設計された」ことを示唆していました。

「もし本当なら、人類史をひっくり返す大発見だ」
研究者たちの戸惑いと好奇心は、やがて世界全体を巻き込む騒動へと広がっていきます。

同時に描かれるのが、莉央という女性と、黒猫「エルヴィン」の物語。
彼女が抱える孤独と不安、そして猫への愛情は、やがて世界の行方と深く結びついていきます。


物語が描くスケールの大きさ

この小説のすごさは、舞台が“宇宙全体”へと広がっていく点にあります。

  • 世界規模で行われる「神との交信」を試みる実験
  • 宗教と科学がせめぎ合う社会の混乱
  • 人類に与えられた「証明せよ」という神からの課題

読んでいると、「これはただのフィクションではなく、今の私たちの社会の縮図ではないか?」と思える瞬間が何度も訪れます。

特に印象的なのは、人々が一斉に空を仰ぎ、両手を広げて祈るシーン。
それは滑稽にも見えますが、同時に「人間が信じることでしか救われない存在」であることを痛烈に突きつけてきます。


読後に得られる気づき

黒猫 砂時計
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1. 神と科学の間で揺れる人間

本作では「神が存在するのか?」という問いが、科学的な実験と宗教的な信仰の両方から描かれます。
その結果、読者は「自分はどちらを信じるのか」と問われます。

2. 自我とは何か

作中では「人間は本当に自我を持つのか」という議論が繰り返されます。
これは哲学的な難題ですが、物語を読むうちに「自分が考えていることは本当に“自分の意志”なのか?」と不安になるのです。

3. 生きる意味をどう見つけるか

莉央と猫・エルヴィンの関係は、人間が「救うことで救われる」存在であることを示しています。
誰かを守ること、信じること――それこそが生きる意味ではないか、と気づかされます。


難しい?それとも読みやすい?

「数式」や「物理学理論」が出てくると聞くと、難解で手が出しにくいと思うかもしれません。
でも心配はいりません。

山田宗樹さんの筆致は非常にテンポが良く、専門的な話は背景としてさらっと流れ、人物の感情や行動が前面に出てきます。
むしろ「難しい理屈はわからないけど、とにかく物語が面白い!」と感じるはずです。

猫の存在が良いアクセントになり、SF初心者でも感情移入しやすくなっています。


山田宗樹さんの魅力

山田宗樹さんは「社会性を持ったエンタメ小説」を書かせたら抜群の作家です。
本作でもその持ち味が存分に発揮されています。

人間の弱さや業をえぐり出すような描写。
未来を予感させるリアリティのある設定。
そこにさらに、壮大な宇宙論と哲学的な問いが加わります。

だからこそ、「人間の小ささ」と「宇宙の大きさ」が同時に胸に迫ってくるのです。


読むことで得られる“変化”

二つの地球
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この作品を読むと、きっと日常の景色が少し違って見えるはずです。

  • 何気なく見上げる夜空が、ただの宇宙ではなく「誰かの設計図」に思えてくる
  • 信仰や祈りに対して「自分はどう向き合うのか」と考えるようになる
  • そして、今ここで生きていることの奇跡を意識できる

それは単なる娯楽小説を超えた“読書体験”です。


まとめ|あなたにとっての「存在の意味」を問う一冊

『存在しない時間の中で』は、
数式や物理学を背景にしながらも、最後には人間の心を問う小説です。

「神を信じるか、科学を信じるか」
「私たちは存在する意味を持つのか」
「もし世界が終わるなら、あなたはどう生きるか」

この問いに、正解はありません。
ただ一つ確かなのは、この小説を読んだあなた自身が、自分の答えを探したくなるということ。

👉 難しそうだからと避けず、ぜひ手に取ってみてください。
読み終えたとき、あなたの中に“存在することの意味”が刻まれているはずです。


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存在しない時間の中で
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山田宗樹

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