この本から得られるもの
- 承認欲求の正体を考えるきっかけ
「何ものかになりたい」と願う気持ちは誰にでもある。その成れの果てを見つめることで、自分自身の欲望を客観視できます。 - フィクションと現実の境界線を揺さぶられる体験
嘘と物語の違いは何か。小説を書くことは詐欺と同じなのか。そんな根源的な問いを楽しめます。 - 小説家という職業の不思議さ
嘘を誠実に語る仕事とはどんなものか。その矛盾に心をつかまれます。 - 自分の生き方を振り返る視点
「理想の自分と現実の自分、その間で折り合えているのか?」――読後、自然と自分に問いかけたくなる一冊です。
どんな本?
小川哲さんの短編集『君が手にするはずだった黄金について』は、6編からなる作品集です。
読んでいると「これは小説なのか、エッセイなのか?」と迷う瞬間がたびたび訪れます。なぜなら主人公の「僕」が作者自身をモデルにしているから。
出てくるのは同級生、恋人、仕事相手、そして怪しい占い師や承認欲求に振り回される人物たち。彼らはどこか滑稽で、同時に現実の私たちの姿と重なって見えます。
フィクションでありながら、妙にリアル。
リアルだけど、どこか嘘っぽい。
その絶妙なバランスが、この作品を独特な読後感にしています。
誰におすすめか
- 20代後半~40代の社会人
「なぜ働くのか」「自分は何者なのか」と迷い始める年代に特に刺さります。 - SNSやネットの虚構に疲れている人
盛られたプロフィールや“映え”にうんざりしている方には、考えさせられるテーマ。 - 純文学が少し難しいと感じてきた人
難解に見えて、読み進めると「身近な人間模様の話」へとつながっていきます。 - 作家志望・クリエイター気質の人
「嘘と創作の境界」に真正面から挑む内容は、創作活動をする人にはたまらない刺激です。
👉 小川哲『君のクイズ』こちらの作品もオススメです。
どんなシーンで読みたいか
- 夜の静かなひとり時間に
内省を促す内容なので、周りに気を取られない夜がベスト。 - 仕事や人生に迷っているときに
就活・転職・人間関係…「なぜそれをするのか?」という問いに向き合えます。 - SNSやニュースで“虚構”を感じたとき
フェイクニュースや炎上に疲れた心に、不思議と寄り添ってくれるはず。
各短編の魅力

◆「プロローグ」
学生時代からの知り合い・美梨との交流を軸に描かれる序章。
就職活動の「人生を円グラフで表せ」という問いに答えられない「僕」は、社会の枠組みに馴染めない自分に戸惑います。
そんな彼に、美梨が「小説を書けばいい」と告げる場面は象徴的です。
小説とは、現実に居場所を持てない人間にとって「唯一の正直な手段」なのだと気づかされる。
ここには全編を通じて繰り返されるテーマ――「何者かになりたい欲望」と「虚構と現実の境界線」が凝縮されています。
◆「三月十日」
震災の“前日”の記憶は曖昧なのに、当日のことは誰もが覚えている。この「一見くだらない雑談」を膨らませて物語にしてしまう力量に唸らされます。
◆「小説家の鏡」
占い師に挑む小説家。嘘を語る占い師と、作り話をする小説家はどこが違うのか――という逆説的な問いが面白い。
◆「君が手にするはずだった黄金について」
SNSで承認欲求を肥大化させた同級生の転落劇。虚構を積み重ねてでも「何者か」になりたい人間の滑稽さと哀しさが描かれます。
◆「偽物」
偽ブランド時計をつける漫画家とのやりとりを通して、「本物とは何か?」を問う物語。人の話を盗んで漫画にする人物の姿に、創作の本質が浮かび上がります。
◆「受賞エッセイ」
小説家として賞を受ける意味、誇らしさと戸惑いが同居する自分の感情。その葛藤が赤裸々に描かれ、作家という職業の「普通じゃなさ」を突きつけます。
読後に得られる気づき

- 承認欲求は誰にでもあるが、行き過ぎると人生を狂わせる
SNSの世界と地続きのテーマで、現代に強く響きます。 - 嘘と創作は紙一重
小説もまた「虚構」を積み上げる行為。詐欺や偽物とどう違うのか?という問いにゾッとさせられる。 - “何ものでもない自分”と折り合えるかが大事
理想の自分と現実の自分――その折り合いをどうつけるかがテーマにあります - 小説家は“偽物の黄金”を追う生き物
虚構の中に真実を探し続ける――それが小説家という生き物
この本の読みやすさ
最初は「頭がいい人の小難しい文章かな?」と身構えるかもしれません。ですが、不思議と読み進めるうちに慣れ、気づけばどんどん引き込まれていきます。
そして読後には、「あれ、これは小説?エッセイ?日記?」とジャンルを超えた不思議な余韻が残ります。これは小川哲さんならではの魅力。
他の本と違うポイント
- 普通の小説よりもリアルに感じる
実在の同級生や経験がベースになっているからこその生々しさ。 - エッセイよりも刺激的
嘘と虚構を混ぜ合わせる構成が「読んだことのない読書体験」を与えてくれます。 - 現代社会とのつながり
SNS・承認欲求・フェイクニュースといったテーマは、私たちの生活そのもの。
読後の余韻と問い
読後に残るのは「理想の自分と現実の自分、その間で折り合えているのか?」という問い。
SNSで誰かと比べて落ち込むこともあるし、「もっと認められたい」と心がざわつくこともある。そんな自分を見つめ直すきっかけを与えてくれる一冊です。
そして気づくのです。
小説家とは、嘘を誠実に語り、偽物の黄金を追い続ける存在なのかもしれない、と。
まとめ
『君が手にするはずだった黄金について』は、
- 承認欲求に振り回される人間の姿
- 嘘と創作の紙一重な関係
- 小説家という職業の本質
を描いた短編集です。
難しそうに見えて、実はとても人間くさい物語。普通の小説では味わえない“読後のざらつき”が、きっとあなたの心にも残るはずです。
👉 「自分は何者か?」と悩んだことがある人には特におすすめ。
読んでみれば、自分の生き方を見つめ直すヒントが必ず見つかります。
📖 次の読書に迷っている方へ。
小川哲『君が手にするはずだった黄金について』は、「嘘と承認欲求」という普遍的テーマを突きつけてくる一冊です。
ぜひ、あなた自身の“黄金”を探しにページを開いてみてください。
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