女の世界の“もやもや”を描く短編集|綿矢りさ『かわいそうだね?』感想・あらすじまとめ

綿矢りさ『かわいそうだね?』の表紙画像。女性心理と恋愛のもつれを描いた短編集。 本の紹介

1. 『かわいそうだね?』綿矢りさ|あらすじと感想レビュー

『かわいそうだね?』は、綿矢りさによる恋愛と人間関係の繊細な心理描写が光る短編集です。表題作「かわいそうだね?」を含む二篇は、どれも女性視点での複雑な感情、恋愛、友情、そして“かわいそう”という言葉の裏側にある心理を描いています。

この記事では、作品のあらすじと感想、印象的なテーマ、共感ポイントなどを紹介しつつ、女性読者におすすめの理由を解説します。

2. 表題作「かわいそうだね?」のあらすじと感想

主人公の樹理恵は、彼氏・隆大と穏やかな関係を築いていたはずだった。ところがある日、隆大が“自分が守らなきゃ”と思った元カノ・アキヨと同居することになり、事態は一変する。

アキヨは「かわいそうな人」として周囲から同情を集める女性。だがその“守られたがる”姿勢に対して、読者は複雑な感情を抱かされる。樹理恵は理解しようと努めつつも、嫉妬と猜疑心に苦しみ、次第に心が追い詰められていく——。

同居の決断を下す隆大、それを許容しようとする樹理恵、そして無自覚に揺さぶりをかけるアキヨ。それぞれの立場に苛立ちを感じながらも、物語に引き込まれていく展開はまさに恋愛エンタメとして秀逸です。

「かわいそう」という言葉の裏には、同情・甘え・依存・支配といったさまざまな感情が渦巻いていることに気づかされます。読んでいて、感情が揺さぶられ、思わず苛立ちを感じる場面もありますが、だからこそリアルで心に残る作品となっています。

3. 『亜美ちゃんは美人』のあらすじと感想

『亜美ちゃんは美人』は、美人で完璧な親友・亜美と、その“ニコイチ”として生きる地味なさかきの視点から描かれる物語です。

亜美をプロデュースしているように見せながらも、どこか冷ややかな目線を持っているさかき。容姿で待遇が変わるという“女の世界”のリアルさが描かれつつも、さかき自身が満たされていくことで関係が変わっていく描写が印象的です。

友人が“ヤバい男”と付き合い始めたら全力で止めるはずなのに、なぜか何も言えない。心の奥にある「どうせ私なんて」という感情や、自信のなさ、友人に対する複雑な思い。それらが交錯し、読者の心にも静かに波紋を広げます。

誰かと自分を比べてしまう気持ち、嫉妬心、依存心、そして自立していく過程。それらが丁寧に描かれていて、読後感は爽やか。女性同士の複雑な友情や心理に触れたい人には特におすすめの一篇です。

4. なぜこの作品が女性におすすめなのか

この短編集は、恋愛・友情・嫉妬・同情・容姿の差など、女性が日々の中でふと感じる“もやもや”を言語化してくれる作品です。

・「かわいそう」って本当にかわいそう? ・天然で可愛い人は、なぜ守られるのか? ・女性同士の友情はなぜこじれやすいのか?

読んでいて苦しくなる場面もあるけれど、それがあるからこそ、自分の感情と向き合える。感情を揺さぶられたい読者にぴったりの一冊です。

5. まとめ|“かわいそう”の裏側を見つめる物語

『かわいそうだね?』は、恋愛小説でありながら、甘さや癒しだけではなく、感情のざらつきやリアルな痛みを描いた作品です。

誰かを守る優しさが、別の誰かを傷つけてしまう。そんな現実を、冷静かつ鋭く描いた綿矢りさの筆力に唸らされます。

読後、共感・モヤモヤ・気づきが残る。だからこそ、「読んでよかった」と思える作品です。


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かわいそうだね?
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