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『アンサーゲーム』ネタバレなし感想|夫婦の心理をえぐる恐怖の監禁サスペンス

五十嵐貴久『アンサーゲーム』の書影。紙袋をかぶった人物が映る不気味なカバーは、愛と信頼が試される心理サスペンスの恐怖を象徴している。 五十嵐貴久

1. 『アンサーゲーム』とは?あらすじと概要

五十嵐貴久による『アンサーゲーム』は、結婚式を終えたばかりの夫婦・樋口毅と里美が、突如として別々の密室に閉じ込められ、“生き残るには2人の答えを揃えるしかない”という試練を課せられる心理サスペンス小説です。

ルールは明快。出題された10の問いに対して、夫婦それぞれが同じ答えを出せば1問クリア。しかし、3問間違えると”ゲームオーバー”となり、内容不明の恐ろしい罰が待っています。プレイヤーはただの夫婦──愛し合い、結婚を決意したばかりの新婚夫婦にしてはあまりにも過酷なゲームです。

幸せの絶頂にいた2人が、極限状態に置かれることで、記憶や感情、そして相手への信頼が少しずつ崩れていく様子が描かれており、読者も手に汗握る展開に引き込まれます。ただのクイズ形式かと思いきや、次第に問われる内容が感情をえぐり、関係性を試すものへと変化していくのです。

2. アンサーゲームの仕組みと心理的恐怖

“生き残るには2人の答えを揃えるしかない”──この言葉の重さを、物語が進むほどに実感させられます。

出題される問いは、「最初のデートはどこ?」「プロポーズの言葉は?」といった思い出系から、「結婚を決めてから、浮気したことはありますか?」といった、お互いの信頼を根本から揺るがすような内容にまで踏み込んできます。さらに、問いは徐々に過去のトラウマや心の奥底に触れるものへと変化し、プレッシャーと恐怖が加速していきます。

極限状態で、相手を信じられるか。過去の記憶や感情をどう再構成するか。そこに少しでもズレがあると即座にミスとされ、脱出のチャンスが遠のいていく。この試練は、愛と信頼をただ試すだけでなく、「自分自身が本当に何を覚え、何を信じていたのか」という内面にまで深く切り込んできます。

また、2人は完全に別々の空間に閉じ込められており、お互いの姿は見えません。リアルタイムで相手の反応も確認できず、ただ“信じて答える”しかないという状況が、プレッシャーを増幅させます。そして背後には、人相も年齢もわからないピエロ姿の謎の人物が存在し、その不気味さがサスペンスとしての恐怖をさらに盛り上げています。

3. 登場人物の背景と緊張感の源

主人公の樋口毅は、日本有数の総合商社「永和商事」に勤める31歳のエリートサラリーマン。若くして係長に抜擢される実力者で、イケメンでもあり、まさに“完璧”と言われる存在です。一方、妻の里美(旧姓:田崎)は、取締役である叔父のコネで入社したお嬢様タイプ。名門女子大出身で、ミスキャンパスにも選ばれるほどの美貌を持つ彼女は、一見“理想のカップル”に見えます。

しかし、物語が進むにつれて、2人の関係にはそれぞれが口にしてこなかった秘密や、相手への不満が少しずつ露呈していきます。そして、この“試練”を仕掛けた犯人は、2人の学生時代から現在に至るまでのあらゆる情報を把握しており、LINEのやりとりや音声までも盗撮していることが判明。読者は現代社会に潜む”監視の恐怖”と、それがもたらす心理的ストレスをまざまざと体感させられます。

4. なぜ“真似しない方がいい”のか?

この物語の試練は、夫婦やカップルが「ちょっとやってみよう」と軽く手を出すには危険すぎます。たとえ同じ経験をしていても、人によって記憶のポイントや感情の受け取り方は異なります。

問いの中には「知らないふりをしてきた秘密」や「本当に知らなかった過去」が含まれており、それをあえて表に出すこと自体が、2人の関係を壊しかねない爆弾になり得ます。作中でも、答えを考える過程で相手の本音を知ってしまったり、自分自身の“隠しごと”がバレることへの恐怖と葛藤が丁寧に描かれており、リアルな心理描写が共感と戦慄を呼び起こします。

読者として読む分には非常にスリリングで面白いですが、現実でやったら高確率で喧嘩になる、という意味でも恐ろしいリアリティが描かれているのです。

5. 『アンサーゲーム』はどんな人におすすめ?

この本は、パートナーとの関係にふとした不安を感じたことがある人に刺さる一冊です。「自分は相手のことを本当に理解しているのか」「相手も同じように自分を見ているのか」──そんなモヤモヤを抱えたとき、読後にいろんな感情が押し寄せてくるでしょう。

また、静かな夜に手に汗握るスリルを味わいたい人、人間関係の深層をのぞき込みたい気分のときにもおすすめです。人間の汚さ、ズルさ、そしてどこかにある“信じたい気持ち”──そうした人間らしさを強く感じさせる本書は、単なるスリラーにとどまらず、読者に深い問いを投げかけてきます。

「あなたは本当に、誰かと“わかり合えている”と言えますか?」と。

6. まとめ:愛を試す“10の問い”に、あなたは耐えられるか?

『アンサーゲーム』は、ただのサスペンス小説ではありません。パートナーとの信頼や記憶、価値観を試す鏡のような作品です。

“生き残るには2人の答えを揃えるしかない”。 たったそれだけのはずなのに、こんなにも恐ろしい。

もしも、自分がこの状況に置かれたら。 あなたは本当に、相手の答えを一致させられるでしょうか?

この作品を読んだあと、隣にいる人のことをもう一度見つめ直したくなる──そんな一冊です。

気になった方はこちらからチェックしてみてください。

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