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【読書感想】幻想的な異界に迷い込む――恒川光太郎『夜市』

小説と夜市の感想記事用アイキャッチ画像 恒川光太郎

1. 『夜市』ってどんな本?

恒川光太郎さんの『夜市』は、2編の短編が収録された中編集です。
一見ホラー小説に思えるかもしれませんが、実際には幻想的で郷愁を誘うような和風ファンタジーとしての魅力が光る作品です。


2. 「夜市」――弟と才能、代償の物語

表題作「夜市」では、野球の才能と引き換えに弟を“夜市”という不思議な市場で売ってしまった少年・裕司の物語が描かれます。
大人になった彼は後悔の中で、弟を取り戻すため再びその市を訪れる決意をします。

才能と代償、そして贖罪というテーマが重く、読む人に「自分ならどうするか?」という問いを突きつけてきます。


3. 「風の古道」――日常のすぐ隣にある異界

もう一編「風の古道」では、日常の中にひっそりと存在する“異界の入り口”としての古道が登場します。
少年が道に迷い込んだ先で出会う世界と、戻ってこれた人・戻れなかった人の存在が語られ、
異世界の美しさと不安定さの両方を感じさせられます。


4. 幻想とホラーの境界線

この2作に共通しているのは、「人ならざるものが棲む異世界」と「そこに足を踏み入れてしまった少年たち」。
もっと怖く描くこともできたはずなのに、あえてそうしなかったことに作者の幻想文学としての意図を感じます。


5. 子どもの頃に読んでいたら…

この作品を読みながら、ふと思いました。
「もし子どもの頃にこの本に出会っていたら、私は本気で夜市や古道を探しに行っていたかもしれない」と。

異界というのは遠くにあるものではなく、日常のすぐ裏にそっと隠れているのかもしれません。
それに気づく感性を、いつしか忘れていたような気がしました。


6. こんな人におすすめ

  • 非日常にひたって癒されたい人
  • 怖すぎない幻想ホラーが読みたい人
  • 和風ファンタジーや異界の話が好きな人
  • 子どもの頃、秘密の道や裏世界を信じていた人
  • 文章から風景が浮かぶ小説が好きな人

7. まとめ:静かで幻想的な非日常を味わいたい人へ

『夜市』は、ただ怖いだけではなく、静かに胸に染み込むような異世界体験をさせてくれる作品です。
疲れた日常から少しだけ抜け出したいとき、子どもの頃の感性を思い出したいとき、ぜひ手に取ってほしい一冊。

ふとした日常の風景の中にも、「もしかしたら異世界が隠れているかも」と感じられるようになるかもしれません。

気になった方はこちらからチェックしてみてください。

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