恒川光太郎『夜市』を読了。
2編収録された短編集で、どちらも「もし子供の頃に読んでいたら、すごく怖かっただろうな」と思わずにはいられませんでした。
表題作「夜市」は、野球の才能と引き換えに弟を売ってしまった少年・裕司の物語。人知れず妖たちが開く不思議な市場「夜市」を再び訪れ、弟を買い戻そうとする彼の姿が描かれます。
もう1編の「風の古道」は、興味本位で踏み入れた古道から異世界へと迷い込んでしまう少年の旅路。
どちらの物語も、人ならざるものたちが跋扈する異界と、そこに足を踏み入れてしまった人間の「畏れ」が軸となっていて、ホラーというよりは幻想的で美しい物語でした。
もっと怖い結末にもできたはずなのに、あえてそうしなかったところに、単なる怖さだけを追求した作品ではない作者の意図を感じます。
描かれる異世界は、怖いけれどどこか懐かしく、子供の頃に読んでいたら「夜市」や「古道」を本気で探しに行ったかもしれない…そんな気持ちにさせられました。
「風の古道」に登場する、舗装されていない道や、日常に紛れ込んだ異世界への入り口の描写は絶品。
“日常のすぐそばにある非日常”を感じさせてくれる描写がとても巧みで、自分まで迷い込んでしまいそうになります。そして、読後にはどこか懐かしく、昔過ごしたある夏の日のような郷愁も残ります。
幻想的で王道の和風ホラーファンタジーを楽しみたい方に、ぜひおすすめしたい一冊です。
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