その悲しみは、未来を守る力になる――『すずめの戸締まり』読了感想
※本記事には一部ネタバレを含みます。未読・未視聴の方はご注意ください。
心に傷を抱えるすべての人へ
震災で大切な人を失ったことのある人、災害を“他人事じゃない”と感じたことがある人にこそ読んでほしい一冊。
『すずめの戸締まり』は、ファンタジーの形を借りて、過去の痛みとどう向き合い、どう未来へ進んでいくかを語る物語です。
読み終わったとき、きっと“自分の中の大事な感情”に静かに触れることになると思います。
過去の「扉」を閉じるということ
物語の舞台は日本各地。ある日、各地で「扉」が開き始め、放っておけば大きな災い――つまり震災のような災害が現実に起きてしまうという設定です。
主人公・鈴芽(すずめ)は、その扉を閉じる旅に出ることになります。
この“扉”はただの空想ではなく、震災という現実の象徴でもあります。
扉を閉じるという行為は、過去の悲しみと向き合い、それをしっかりと受け止め、前へ進むための一歩なのだと感じました。
「閉じること」と「守ること」の意味
印象的だったのは、「閉じること」と「守ること」が物語の中心に据えられている点です。
鈴芽は幼い頃に母を亡くし、その喪失と向き合いながら成長していきます。
特に心に残ったのは、彼女の絵日記のシーン。
そこには、真っ黒のクレヨンで塗りつぶされたページがありました。
あの黒いクレヨンは、彼女の言葉にならない悲しみや怒り、そのすべてが詰まっているようで、読みながら胸が締めつけられました。
でも、鈴芽はただ悲しみに沈むだけでなく、自分の力で前へ進む決断をします。
その姿はとても勇敢で、読み手にも「自分も何かを選び、進んでいけるかもしれない」と希望をくれるものでした。
災いの中にある、あたたかいもの
鈴芽が家出の旅の中で出会う人々は、皆どこか不器用で、でも優しい存在です。
彼女を助け、見守り、ときに一緒に笑ってくれる人たちとの出会いが、彼女の心を少しずつ癒していきます。
物語を通して感じたのは、「誰かとつながること」の大切さ。
たとえ過去がどれだけ苦しくても、人との繋がりがあれば、少しだけ前を向ける。
それをこの物語は静かに、でも力強く伝えてくれます。
あなたの中の扉を、そっと閉じるために
『すずめの戸締まり』は、ファンタジー作品でありながら、震災の記憶や喪失の痛み、人とのつながりといった“リアルな感情”が詰まった物語です。
もしあなたが何かを「閉じたい」、あるいは「守りたい」と思っているなら、きっとこの作品はあなたの心に寄り添ってくれます。
映画では、映像美も音楽も物語にぴったり寄り添っていて、静かに心を震わせてくれました。
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