この本から得られるもの
- 海外駐在や移住生活のリアルな体験を疑似体験できる
- 「どんな状況でも楽しむ力」を持つ菖蒲の生き方から学べる
- 異文化や夫婦関係の価値観の違いについて考えられる
- 自分らしく生きることの大切さを感じられる
- コロナ禍という特殊な時代の記録を通して、社会や人間関係を見つめ直せる
あらすじ|コロナ禍の北京へ

主人公・菖蒲(アヤメ)は30代の元ホステス。海外赴任中の夫に呼ばれ、コロナ禍真っ只中の北京へ行くことに。最初は遊び放題の日本生活を満喫していたものの、夫から「中国に馴染めず適応障害気味になり鬱寸前だから、そばに来て助けて欲しい」というSOSを受けて仕方なく同行します。
夫は高級マンション暮らしで、料理を作ってくれる人やハウスクリーニングまで揃った贅沢な環境。愛犬のペイペイにも専用の部屋があるほど。買い物はブランドショップでお金を気にせず楽しめ、まるでセレブ気分。ところが北京の街には、貧富の差や監視社会、文化の違いなど、日本では考えられない現実が溢れていました。
湖も川も凍りつく厳しい寒さ、火事になるほどの爆竹が鳴り響く春節、青信号でも安心できない交通事情。読者はページをめくるたび、異国で暮らす生々しいリアルさを味わえます。
菖蒲のキャラクターが面白すぎる!
菖蒲はとにかくポジティブで自由すぎる女性。風変わりなお店にもためらいなく飛び込み、誰にどう思われてもお構いなし。相手を言い負かすのが知性だと思い、騙されないで自分の好きに生きることを「教養」と定義する姿は圧倒的です。
彼女の信条は「精神的勝利法」。これは魯迅の小説『阿Q正伝』に登場する阿Qという人物からきた言葉です。阿Qは、社会の最底辺に生きる弱い立場の男で、現実には負けてばかり。しかし彼は、どんな敗北も「自分は勝っている」と思い込むことで心の平穏を保ち続けます。この“精神勝利法”は皮肉たっぷりの表現ですが、菖蒲はそれをポジティブに転用し、自分の人生を前向きに生き抜く力にしています。
「負けを勝ちに変える」という姿勢を極めたら、毎日がボーナスステージ。読んでいると「私も会得したい!」と思ってしまいます。
「男も高級バッグも経歴も魅力も持っていなくても、勝っていると信じ込めば最強」という発想は、一見突拍子もないようでいて、現実を生き抜くための大切な武器かもしれません。菖蒲はまさに“厚顔無恥”を逆手に取って人生を攻略していく女性なのです。
北京の街並み・生活描写のリアリティ

この小説の大きな魅力は、北京生活のリアルな描写です。
- 冬の北京は湖や川がパッキパキに凍るほど寒い
- 春節では爆竹が街中で鳴り響き、火事になるほど派手
- 犬は自由に歩き回り、交通ルールは日本のように安全ではない
- 大皿料理が当たり前でボリューム満点、どこでも持ち帰り可能
- 風水が街並みに影響しているような不思議な雰囲気
- 監視社会のため比較的治安は良いが、息苦しさも感じられる
異国の「当たり前」に触れることで、日本の生活との違いが鮮明になります。写真があればそのままガイドブックになりそうなほどで、読者は北京を体験したような気分になれるでしょう。
夫婦関係のリアルさ
物語の大きなテーマは「夫婦のすれ違い」。
- 菖蒲は子どもを持ちたくない
- 夫は50代で子どもを望んでいる
この価値観の違いが二人の間に深い溝を作ります。序盤では「案外バランスが良いのかも?」と思わせる二人ですが、時間が経つにつれ、その差はどうしようもなく大きなものへと育っていきます。
異国という非日常の地でありながら、夫婦関係の葛藤はどこにでもある「普遍的な悩み」です。だからこそ、読者は「普通って何?」「夫婦って何?」と考えさせられるのです。
読後に得られる気づき
- 異国で暮らすリアルな大変さと楽しさがわかる
- 「自分の幸せは自分で選んでいい」と背中を押してもらえる
- 普通や常識に縛られない生き方の可能性を感じる
- 夫婦関係や価値観の違いをどう乗り越えるかを考えるきっかけになる
- コロナ禍という特殊な環境での生活記録を通じて、自分の生活を見直す視点を得られる
こんな人におすすめ
- 海外駐在や移住に興味がある人
- ポジティブに生きたいと思っている人
- 綿矢りさ作品が好きな人
- 結婚や夫婦関係について考えたい人
- 異文化を小説で楽しみたい人
- コロナ禍をどう過ごしたか、振り返りたい人
感想まとめ|「精神勝利法」で生き抜くヒント
『パッキパキ北京』は、ただの異国滞在記ではありません。主人公・菖蒲の自由すぎる生き方は「人生をもっと楽しんでいいんだ」と気づかせてくれます。普通って何?夫婦って何?と問いながら、異国の北京を全力で楽しむ姿は爽快そのもの。読んでいるこちらまで元気になります。
一見破天荒に見える菖蒲ですが、彼女の姿勢は「失敗を恐れず、自分の欲しいものを選び取る強さ」の象徴。北京の空気を全力で吸い込みながら、自分らしく生き抜く彼女は、読む人に確かな勇気を与えてくれます。
あなたもぜひ菖蒲のように「完全勝利」気分で、日常をボーナスステージに変えてみませんか?
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