1. はじめに:この本で得られるもの
一穂ミチさんの『恋とか愛とかやさしさなら』は、「愛」と「信頼」、そして「許し」とは何かを問いかけてくる衝撃的な小説です。読み終えたとき、心の奥底を揺さぶられ、次のような気づきを得られるはずです。
- 大切な人が罪を犯したとき、自分はどう向き合えるのか
- 好きと信頼は同じものなのか、あるいは別物なのか
- 人の過ちを赦すことはできるのか、それとも赦せないのか
- 加害者と被害者、それぞれに残る傷はどう癒えるのか
単なる恋愛小説ではなく、人間の弱さや欲望、そして社会が抱える性犯罪の問題にまで踏み込んだ、読み応えのある作品です。
2. 物語のあらすじ

主人公の新夏(にいか)は、写真を撮る仕事をしている女性。恋人の啓久からプロポーズを受け、幸せな未来を思い描いていました。ところがその晩、啓久の母からかかってきた一本の電話が、二人の関係を根底から揺るがします――「息子が盗撮で逮捕された」。
あまりにも突然の出来事に、新夏は事実を受け止めきれません。信じたい気持ちと、心の奥に芽生える疑念。その狭間で彼女は苦しみます。やがて新夏は、自分の心を確かめるために大胆な行動を取ります。それは、愛情と信頼を同時に見つめ直す試みでもありました。
物語はその後、加害者となった啓久の視点も交えながら進みます。罪を犯した人間に向けられる社会の視線、そして恋人として寄り添うかどうか悩む新夏の葛藤――。読者は「愛と罪」「許しと信頼」という普遍的なテーマに、真正面から向き合わされることになります。
3. 誰におすすめか
- 恋人や配偶者との「信頼関係」について悩んでいる人
- 性犯罪や、それに伴う社会的な偏見や烙印を現実的に考えたい人
- 綺麗ごとではなく、生々しい人間関係を描く小説に惹かれる人
- 読後に考えが止まらなくなるような作品を探している人
4. どんなシーンで読みたいか
- 恋愛と倫理の狭間で揺れる自分に向き合いたいとき
- パートナーの「過去」を知ってしまったときの気持ちを想像したいとき
- 重くても骨太なテーマに挑戦したい休日の夜
- 社会問題を文学を通して考えたいとき
5. 読後に得られる気づきや変化
- 「好き」と「信頼」は同じではない。愛情があっても信頼は簡単に戻らない。
- 性犯罪は「たった一度」でも、加害者・被害者双方の人生を大きく狂わせる。
- 周囲の声(姉・友人・母親・被害者など)は多様だが、最終的に選ぶのは当事者の心。
- 許すとは、相手の罪を消すことではなく、自分の心に折り合いをつける行為である。
6. 印象的なシーンとその意味

最も印象に残るのは、新夏が自分の気持ちを確かめるために、とても極端な方法を選ぶ場面です。愛情と不信のはざまで揺れる中で、あえて相手を試すような行動に出てしまう――その必死さと葛藤が痛いほどに伝わり、読者も胸を締めつけられるような気持ちになります。
また、被害者の女性が、親の意向によって「全世界に向けて配信されるような状況」に立たされるエピソードも描かれます。被害者でありながら、社会の視線や欲望にさらされてしまう姿は、単純な善悪では割り切れない現実を静かに突きつけてきます。
7. 登場人物から見えてくる「社会の声」
- 母親:逮捕されなかったことを「不幸中の幸い」と考え、息子を庇う。
- 姉:自身の性被害経験から、別れるべきと強く勧める。
- 友人:打算的に「付き合い続けた方が得」とアドバイスする。
- 被害者女性:性的に搾取されながらも、自ら視線に晒され続ける選択をする。
これらの人物を通して、社会には様々な立場や声が存在することが浮き彫りになります。それぞれが「現実的な答え」でもあり、「冷酷な事実」でもあるのです。
8. 本書の価値と読者へのメリット
- 加害者視点を描くことで、被害の重さを逆照射する構造に気づける。
- 「盗撮」という身近な犯罪を、自分ごととして考えるきっかけになる。
- 愛と信頼、赦しの難しさを文学を通じて体感できる。
- 読後に必ず「自分ならどうするか」と考える時間が訪れる。
9. まとめ
『恋とか愛とかやさしさなら』は、恋愛小説の皮をかぶりつつ、読者に「愛」と「罪」、「赦し」と「信頼」という重いテーマを突きつける作品です。性犯罪という題材は決して軽くありません。しかし、だからこそ読む価値があります。
好きは取り戻せるかもしれない、けれど信頼は戻らない。その現実をどう受け止めるのか。読後、あなた自身の中に必ず新しい問いが芽生えるはずです。
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