1. はじめに
「呪いの人形」と聞けば、夜な夜な動き出して人を恐怖に陥れる——そんな背筋の凍る物語を想像する人が多いでしょう。
ですが、藤崎翔さんの『お梅は呪いたい』は、その想像を気持ちよく裏切ってきます。
本作は、戦国時代に一族を滅ぼしたとされる恐ろしい人形「お梅」が現代によみがえり、人を呪おうと全力を尽くすものの、なぜか失敗ばかりしてしまうコメディ仕立ての連作短編集。
恐怖よりも笑いと温かさがじんわり残る、不思議な読後感が魅力です。
この本を読み終える頃には、あなたもきっと“呪い人形お梅”を応援したくなっているはずです。
2. 物語のあらすじ(ネタバレ控えめ)
古民家の解体現場から出てきた古びた木箱。その中に入っていたのは、500年前に恐れられた呪いの人形「お梅」。
彼女は瘴気を使い、人の体を弱らせたり負の感情を増幅させたりする力を持っています。
現代に蘇ったお梅は、まずは持ち主を呪い殺そうと意気込みますが……
現代人は昔に比べて栄養状態も良く、精神的にもタフ。おまけに生活習慣や社会の常識も500年前とはまるで違い、思うようにいきません。
YouTuber、失恋に荒れる女性、引きこもり青年、孤独な老婆、認知症の老人——。
持ち主を変えるたびにお梅は作戦を練り直し、呪いを仕掛けますが、なぜか逆効果で、みんなの人生が好転してしまうのです。
本人は大いに不本意ながらも、次のターゲットを求めてさまよい続ける——そんなドタバタが続きます。
3. お梅の奮闘と空回りの魅力

お梅は決して善人ではありません。むしろ本人は心底、人を呪いたいと願っています。
しかし、現代人は栄養も知識も豊富で、なかなか思うように弱らない。さらに500年の時差で、現代の道具や習慣に疎いお梅は、思わぬ方向へ計画が転がってしまいます。
時には、うっかり自分の姿を“あるもの”に記録されてしまったり、
思いがけず持ち主の健康を守るきっかけを作ってしまったり、
予想外の相手に追い詰められて逃げる羽目になったり……。
どのエピソードも、お梅の必死さと現代とのズレが笑いを誘い、読み終える頃には不思議と心が温まります。
4. 誰におすすめか
- ホラーは苦手だけど、ちょっと不思議な話を楽しみたい人
- コメディや人情話が好きな人
- 短編でテンポよく読める作品を探している人
- キャラクター同士の意外なつながりを楽しみたい人
年齢層は中学生から大人まで幅広くおすすめできます。怖さはほぼゼロなので、ホラー初心者でも安心です。
5. どんなシーンで読みたいか
- 通勤・通学のちょっとした移動時間に
- 就寝前のリラックスタイムに
- 休日にコーヒーを飲みながらのんびりと
- 読書会や友人との雑談のネタに(「呪いの人形なのに人助けしちゃう話」と盛り上がること必至)
6. 読後に得られる気づき・魅力ポイント

- 恐怖と笑いのギャップ
設定はホラーでも、展開はコミカル。その意外性がクセになります。 - 時代ギャップの面白さ
現代文化を知らないお梅が戸惑う様子は、タイムスリップものの醍醐味。 - 登場人物の小さな幸せ
呪いのつもりが人生の転機になり、感謝される——そんな人間ドラマが心を温めます。 - 連作短編の妙
別の話に出た人物が思わぬところで再登場し、「あ!」となる仕掛けが楽しい。
7. 本書の面白さを支える要素
- 個性豊かな登場人物
お梅の持ち主たちはクセが強く、それぞれが物語を引き立てます。 - 軽快なテンポ
持ち主が変わるごとに新しいドラマが生まれ、飽きさせません。 - ユーモラスな語り口
お梅の一人称視点でのぼやきが独特の味を出しています。 - 予測不能な展開
呪いが失敗し続けることで生まれるハプニングの数々。
8. おわりに
『お梅は呪いたい』は、怖さよりも笑いと温かさが心に残る一冊です。
500年のブランクを埋められないまま奮闘するお梅の姿は、滑稽でありながらどこか愛おしい。
表紙は少しホラー寄りですが、中身は人間味あふれるエンタメ。
「呪いの人形」というおどろおどろしい設定が、こんなに軽やかで楽しい物語になるとは——読後、きっと誰かに薦めたくなります。
笑って、クスっとして、ちょっと心が温まる。そんな時間を過ごしたい人に、心からおすすめします。
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