古市憲寿さんの小説『ヒノマル』を読みました。
昭和18年、戦時下の日本を舞台に、少年と少女の出会いを描いた青春小説です。
正義とは何か。
時代に流されず、自分をどう貫くか。
そんな問いを静かに、しかし力強く投げかけてくる作品でした。
時代が変われば正義も変わる
物語の中心にいるのは、強い愛国心を持つ少年。
「お国のために命を捧げることが正義」と信じて疑わない彼は、ごく普通の感覚を持った、ある少女と出会うことで、少しずつ「自分で考える」ようになります。
この描写から強く感じたのは、「正義は時代によって変わる」という事実。
どんなに純粋な信念も、それが生まれた背景を知ることで、私たちは見方を変えることができます。
戦争が奪うのは命だけじゃない
『ヒノマル』は戦争の悲惨さだけでなく、戦争が人々の価値観までも変えてしまう恐ろしさを描いています。
敵との戦い以上に、国民同士の相互監視や、“正しさ”の押しつけが広がっていく。
「普通に生きる」ことが難しくなる世界。
それは、戦時中に限らず、私たちの今にも重なる問題かもしれません。
現代に通じる鋭いメッセージ
作品中には、鋭く、そして痛快なセリフが散りばめられています。
「馬鹿な人ほど間違った手段を盲信して、意味のない運動に躍起になる」
「極めて官僚的な理由で国民同士が分断される」
これらのセリフは、パンデミック後の今の社会を思い出させるような、リアルな空気を含んでいます。
誰かの掲げた「正しさ」に無意識に従い、自分で考えることをやめてしまうことの危うさ──
物語はそれを、静かに警告しているように感じました。
「心は自由」という救い
印象的だったのが、作中で語られるこのセリフです。
「人間に与えられた唯一の贈り物は、他人の心が分からないこと」
「いつだって、私たちの心は自由よ」
誰にも縛られない、心の自由。
たとえ時代や環境に抑圧されても、自分の内側には「選ぶ自由」が残されている。
それは、どんなに閉ざされた状況でも希望を失わないための、大切な鍵なのかもしれません。
おわりに
『ヒノマル』は、昭和という重い時代を背景にしながらも、
今を生きる私たちにこそ必要な問いを投げかけてくる物語です。
何が正しいかではなく、
「自分は何を信じて生きていくか」。
その答えを持てる人間でありたいと、心から思いました。
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