『みんなのお墓』レビュー|常識を超えた問題作、その魅力と嫌悪の境界線
1. 衝撃の読後感──予想を裏切るタイトルと内容
『みんなのお墓』というタイトルに惹かれて手に取った読者は、まずその内容に驚かされることでしょう。期待していた静謐な群像劇や、人生の終着点をめぐるヒューマンドラマとはまったく異なる、過激で異様な展開が待っています。
放屁、放尿、脱糞、自慰行為といった、生理的嫌悪感を誘う描写が繰り返され、読者を突き放すような内容です。殺人やいじめ、事故死も含め、一般的な読者が「これは読みたくない」と感じるであろう要素が散りばめられています。
2. 狂気と日常の共存──市営共同墓地を舞台に
物語の舞台はK市営共同墓地とその周辺。ここに暮らす人々の日常が、断片的かつ強烈な個性を持ったエピソードとして描かれていきます。小学校5年生の視点から見える町の姿は、どこか現実離れしており、それでも妙にリアルです。
登場人物は全裸で墓地を駆け回る主婦、脱糞する女子、引きこもりの仙人、デリヘルで遊ぶ中年男性、小学4年生の少女たちなど。一人として”まとも”なキャラクターは登場せず、それぞれの常識や価値観を破壊するかのように描かれます。
3. 下品さの中にある文学性──万人受けしない魅力
たしかに本作は下品です。読む人を選びます。しかし、この作品の魅力は、その下品さの中に潜む文学性と中毒性にあります。文章は客観的でドライ。それでいて、読者をどこか異様な世界へと引きずり込み、思わずページをめくり続けてしまう不思議な力を持っています。
「ちゃんと生きても駄目に生きても、結局みんな灰になる」──10歳の少女が語るこの一文に、作者の主張が凝縮されているようにも感じられます。
4. かわいい表紙とのギャップ──シュールすぎる世界観
一見かわいいイラストの表紙に騙されて手に取ると、内容とのギャップに驚くことになります。シュールでグロテスク、倫理の境界線を何度も越えていく描写の数々に、多くの読者は困惑するでしょう。
しかし、奇妙に惹きつけられて最後まで読んでしまったという声も多く、嫌悪感と好奇心のあいだを揺れ動く読書体験になることは間違いありません。
5. 読者によって分かれる評価──読み手を選ぶ危険な毒
この本の評価は、読む人によって大きく分かれます。
- 「下品すぎて耐えられない」
- 「でもなぜか最後まで読んでしまった」
- 「日常の裏側を見せられているようで怖い」
誰にでも勧められる作品ではありませんが、平凡な日常の裏にある狂気や異常さに惹かれる人にとっては、強烈な読書体験になるでしょう。
6. まとめ──この作品に触れるべきか?
『みんなのお墓』は、可愛い表紙に騙されて読むとショックを受ける作品です。万人受けは絶対にしません。しかし、道徳や常識では語れない人間の本質、誰も見せない裏側を描いた作品として、一部の読者には深く刺さるでしょう。
“理解できないけど忘れられない”。そんな一冊に出会いたい方にだけ、手に取ることをおすすめします。
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