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嫉妬も、愛も、光になる――木爾チレン『神に愛されていた』

木爾チレン『神に愛されていた』の表紙画像。机の上の紙片が舞い上がり、窓辺に立つ女性が光に包まれている幻想的なデザイン。

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この本で得られること

この本を読むと――
「誰かを羨む苦しさ」や「報われない愛の痛み」が、
少しやわらぐような気がします。

なぜならこの物語は、“才能と愛”をめぐるふたりの女性の人生を通して、
「愛されたい」「認められたい」という誰もが抱える想いを、
まっすぐに描き出しているからです。

自分を信じることが怖くなったとき、
この物語はそっと背中を押してくれます。


あらすじ(ネタバレなしで)

小説家・東山冴理のもとに、30年ぶりの新作依頼が届く。
出版社の編集者・四条花音が語ったのは、亡くなった人気作家・白川天音にまつわる話だった。

才能を信じ、ただ書くことだけに救いを求めていた冴理と、
神に愛されたような光を纏う少女・天音。
二人の作家は、同じ道を進みながら、すれ違い、傷つき、
それでもどこかで惹かれ合っていく。

冴理の過去、天音の真実、そして花音が抱える秘密。
それらが静かに交わるとき、浮かび上がるのは“愛と才能の光と影”。

読むほどに痛く、けれど目を離せない。
そんな不思議な吸引力をもつ物語です。


誰におすすめか

この本は、こんな方におすすめです。

  • 自分の才能や努力に自信が持てなくなっている人
  • 誰かを羨んで苦しくなった経験がある人
  • 「愛すること」と「依存すること」の境界で悩んでいる人
  • 作家・表現者・クリエイターとして生きる痛みに共感できる人

そして何より、
「誰かに理解されたい」「それでも書きたい、伝えたい」
そんな気持ちを抱えているすべての人に、静かに寄り添ってくれる作品です。

“人を理解すること”の難しさと、
それでも誰かを想わずにはいられない心。
そんなテーマが好きな方には、町田そのこさんの『52ヘルツのクジラたち』もきっと響くはずです。


どんなシーンで読みたいか

この作品は、
夜の静けさに包まれた時間に読むのが似合います。

心がざわつく日、誰かと比べてしまった夜、
「私なんて」とつぶやきたくなる瞬間。

そんなとき、この本を開くと、
痛みの奥にある“愛の形”が見えてくるかもしれません。


冴理と天音──対立ではなく、鏡のような存在

ゴミの中での暮らしのイメージ

最初は、冴理の視点から物語が始まります。
才能を信じていた少女が、母親との確執や貧困、孤独を抱えながら、
小説に自分を救わせようともがく姿に胸が痛みます。

そして次に現れるのが、若くして天才と呼ばれた白川天音。
同じ文芸部、同じ大学、同じ賞を受けた“もう一人の冴理”のような存在です。

二人はまるで表と裏、光と影のよう。
冴理は、自分こそ「神に愛された特別な存在」だと信じていた。
けれど、いつしか“神に愛されているのは天音のほうだ”と思い知らされる。
一方の天音は、冴理を“神”のように崇め、その光を追い続けていた。

互いに相手を見上げながら、すれ違い、傷つき、
それでもどこかで惹かれ合ってしまう――そんな二人の物語です。


誤解の中にある「純粋な愛」

冴理は天音を“奪う者”だと思い込み、
天音は冴理を“救うべき神”だと信じていた。

どちらも間違ってはいません。
ただ、愛の表現があまりにも不器用だっただけ。

「あなたの邪魔をするものを、全部排除したい」
天音の行動は、恐ろしいほどに純粋でした。

けれど、その純粋さが誰かを傷つけ、壊してしまうこともある。
それでも人は、誰かを想わずにはいられない――その矛盾こそが、人間の真実なのかもしれません。

読んでいて何度も、胸の奥が小さく痛みました。
自分の中にも、誰かを羨む心が確かにある。
その醜さを突きつけられたようで、目を背けたくなる瞬間もありました。
けれど不思議と、その痛みの奥に「それでも誰かを理解したい」という静かな願いが残るんです。


才能とは、愛されたいと願う心なのかもしれません。

この物語を読みながら、何度も考えました。
才能とは、生まれ持った特別な力ではなく、
誰かに理解されたい、誰かに届きたい――そんな思いの延長線上にあるのだと。

冴理も天音も、愛に飢えながら、書くことでしか自分を保てなかった。
だからこそ、彼女たちの「書く」という行為は、祈りのように見えました。

木爾チレンさんは、才能や成功よりも、
“それでも人を信じたい”という心の力を描いている気がします。

言葉にするのが難しいけれど、読み終えたあと、誰かを赦したくなるような気持ちが残りました。


美しさと狂気が紙一重に存在する世界

作家さんの執筆作業のイメージ

やさしさと鋭さが同居した文章。
嫉妬や絶望のような感情でさえ、どこか人間らしい温度をもって描かれている。
その描写は冷たく突き放すのではなく、痛みを抱えたままそっと寄り添うようです。

ページをめくるたび、登場人物の息づかいが伝わってくる。
まるで、自分の中にも同じ感情が眠っていたことを思い出させられるようでした。
読んでいるうちに、何度も「人を描くって、こういうことなんだ」と感じました。

読後の気づきと変化

物語の終盤で、静かに心がほどけていくような瞬間があります。
それは、誰かの痛みを知り、自分の痛みを受け入れるような時間。
物語の終わりとともに、自分の中の何かがそっと静まっていくのを感じました。
嫉妬も、愛も、絶望も――
そのすべてが、人が生きていくうえで避けられないものなんだと感じたからです。
この本は、
「弱さの中にも、ちゃんと光はある」
そんな当たり前のことを、もう一度思い出させてくれる物語です。


作者・木爾チレンさんの魅力

木爾チレンさんの作品には、
“人間の心の揺れ”を丁寧にすくい取る優しさがあります。

難解な文学的表現ではなく、
誰にでも届く言葉で、
深く複雑な感情を描ける稀有な作家です。

今回も「わかりやすさ」の中にある深みが際立っており、
まるで透明な水の底を覗き込むような読書体験でした。


まとめ|人は誰もが「神に愛されている」

『神に愛されていた』は、
嫉妬や絶望を抱えたすべての人に、
“赦し”と“再生”を与えてくれる物語です。

才能に苦しむ人へ。
誰かを羨んでしまう人へ。
そして、自分を嫌いになりかけている人へ。

この本は、
「あなたは愛されている」と、
静かに、確かに教えてくれます。

読み終えたとき、きっとあなたも、
少しだけ優しくなれるはずです。


📖 木爾チレン『神に愛されていた』
心がざらりとしながらも、
最後にはあたたかい光が残る、深い愛の物語です。


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