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暴力の中でしか咲けない花──『ババヤガの夜』を読んで

『ババヤガの夜』王谷晶|暴力と自由を描く女性たちの物語【ダガー賞受賞作】

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この本を読むと得られること

この本を読むと、「生きるとは何か」「自由とは何か」を、自分の内側から問い直すきっかけになります。
血と暴力にまみれた世界の中で、それでも人間らしさを失わずに生きる女性たちの姿に、
心の奥が静かに揺さぶられます。

強さとは何か。
優しさとは、どうすれば守れるのか。
そんな問いが、ページをめくるごとに読者の胸へ刺さってくる物語です。


あらすじ(ネタバレなし)

物語の主人公は、新道依子。
喧嘩が強く、筋肉隆々で、どこか孤独な22歳の女性です。
ある日、ほんの小さなきっかけから、暴力団の世界に足を踏み入れることになります。

彼女が護衛を任されたのは、極道の娘・内樹尚子。
何もかも管理された生活に閉じ込められた少女と、
世間からはみ出した依子。
ふたりのあいだには最初、反発しかありません。
けれど少しずつ、言葉を交わすうちに、奇妙な信頼のようなものが芽生えていきます。

その関係はやがて、彼女たちの人生をまるごと変えていく――。
暴力、逃亡、そして40年にわたる「生き延びる物語」。
それが『ババヤガの夜』です。


誰におすすめか

この物語は、「社会の枠組み」に息苦しさを感じている人にこそ読んでほしいです。
たとえば——

  • 「普通に生きる」ことに疲れた人
  • 人の目や常識に合わせることがしんどい人
  • 自分の中に眠る“野生”や“怒り”をどう扱えばいいかわからない人

そんな人たちにとって、新道依子というキャラクターは、
「こんなふうに生きてもいいんだ」と、どこか心を解放してくれる存在になるはずです。

彼女は暴力的で、粗野で、不器用。
でも同時に、誰よりも誠実で、誰かを守ることに命を懸けられる人でもあります。
その姿に、ただ圧倒され、息をのんでしまいました。

合わせて読みたい

暴力の中で生きる女性を描いた物語といえば、逢坂冬馬さんの『同志少女よ、敵を撃て』も印象的です。

命のやりとりの中で、何を守り、何を失うのか——同じく“生き抜く力”を感じる作品です。


どんなシーンで読みたいか

この作品は、静かな夜に一人で読むのがおすすめです。
音楽もテレビも消して、部屋を少し暗くして。
ページをめくるごとに、血の匂いと心の痛みがゆっくりと迫ってきます。

一方で、読み進めるうちに、
「こんなにも生きることは強烈で、美しいものなのか」と思わず息を呑む瞬間があります。

現実のつらさに押しつぶされそうな夜、
「私はまだ、何かを守りたい」と思っているとき、
この物語があなたの背中をそっと押してくれるはずです。


生きるための暴力、守るための暴力

この作品で印象的だったのは、暴力の描写です。
とにかく喧嘩がリアル。
骨がきしむような音まで聞こえてきそうでした。
でもそれ以上に感じたのは、依子にとって暴力は「生きる手段」であり、祈り」でもあるということ。

祖父に鍛えられ、武道ではなく“喧嘩”を選んだ彼女。
「武道家は喧嘩はできない」という祖父の言葉が、彼女の生き方そのものでした。
型にハマることを拒み、自分の力で立つ。
それは、暴力に頼るというよりも、
「他人のルールで生きない」という強烈なメッセージに思えました。


柳という男に見る「社会の影」

依子と関わる男・柳もまた、印象的な人物です。
彼は裏社会に生きながらも、どこか知的で、誇り高い男。
そんな柳が口にする言葉――
「はぐれもんや半端者がしのいで行けるのは裏社会しかない」
この一言に、日本社会の冷たさが凝縮されています。

つまり、“まっとうに生きようとしても許されない人間”がいるということ。
その残酷な現実を、王谷晶さんは冷静な筆致で描き出しています。
だからこそ、依子や柳の生き様が切なく、美しく見えるのです。


依子と尚子――名前を変えても消えない絆

物語の後半では、ふたりの逃亡生活が続きます。
名前を変え、姿を変え、まるで別人として生きる日々。
それでも、依子と尚子のあいだには、
確かに“絆”のようなものが残っていました。

40年という年月の中で、
ふたりは互いの存在に寄りかかりながら、生き抜いていきます。
そして最後に描かれるのは、
“鬼婆”としての依子——人ではなく、自然の一部として生きる女。

読んでいるうちに、「人として生きるのではなく、自然体で過ごしていく」――
そんな感覚が、ふと自分の中にも広がっていきました。
うまく言葉にはできないけれど、
“もっと素のままでいいのかもしれない”と、静かに思えたのです。


読後に得られる気づき

読み終えて強く感じたのは、
**「型にはまらないことの強さ」**です。

社会の常識や枠組みの中では、
“暴力的な女”も、“はぐれ者”も、生きづらい存在です。
けれど彼女たちは、
「それでも自分で選び、責任を持って生きる」ことをやめませんでした。

型にはまる方が生きやすい。
けれど、どの型にはまるかは自分で選べる。
もしかしたら、その自由こそが「生きる力」なのだと気づかされます。


まとめ|「この世の外側」で生きる女たちの物語

『ババヤガの夜』は、
血と暴力、そして深い孤独の物語です。
でも同時に、どこまでも愛と自由の物語でもあります。

依子も尚子も、社会の枠に収まらない。
それでも、確かに“人間としての尊厳”を失わない。
その姿が、読む人の心を撃ち抜きます。

うまく言えないけれど、胸の奥がずっと熱くなっていました。


💡こんな人におすすめ

  • 強く生きる女性の物語が好きな人
  • 社会の外側で生きる人に共感する人
  • 人間の「暴力」と「優しさ」を同時に見つめたい人

📚読後の余韻

読後、心の中に静かな炎が残ります。
それは「私も、自分の生き方を選んでいい」という確信のようなもの。

社会のルールに縛られ、型にはめられがちな私たちに、
王谷晶さんは問いかけます。

「あなたは、誰のルールで生きていますか?」


📖 『ババヤガの夜』(王谷晶)
暴力の中にこそ、優しさがある。
人間の底の底まで描く、渾身の一冊です。


気になった方はこちらからチェックしてみてください。

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