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人とのつながりを思い出す物語|如月つばさ『アヒルと犬とそらいろ食堂 季節めぐる、忘れじの記憶』(ことのは文庫)レビュー

如月つばさ『アヒルと犬とそらいろ食堂 季節めぐる、忘れじの記憶』書影|田舎の食堂とアヒルと犬が登場する心温まる小説レビュー 如月つばさ

この本で得られるもの

「毎日を大切に生きる」というシンプルだけれど難しいテーマを、優しく体に沁み込ませてくれる物語です。

  • 忙しい日常で忘れがちな「人とのつながり」を思い出せる
  • 動物や妖怪たちの存在に癒され、心がふっと軽くなる
  • 「時間は限られているから、大切な人に会えるうちに会おう」という切実な気づき
  • 田舎の四季や食の描写を通して、心を整える読書体験

人は必ず「出会い」と「別れ」を繰り返しながら生きています。その当たり前を、あらためて温かく教えてくれる本でした。


あらすじ

主人公・観月葵は25歳。父は酒に溺れ、母は早くに事故で亡くし、婚約も破棄され、心に傷を抱えています。そんな葵が田舎の神白村で「そらいろ食堂」を始めることになり、そこから物語が動き出します。

庭にはアヒルのピー君、やがて迷い込んできた犬のハチ、そして葵にしか見えない妖怪たち。幼い頃に出会ったイタチの妖怪・ミズハや、座敷わらし、狐のユキ…。彼らは怖い存在ではなく、人間を支え、寄り添い、ときに導く存在として描かれています。

食堂に集う村人たちも、みな悩みや孤独を抱えていました。
かつて料理人だった田牧さんは、仕事一筋で家族を失い後悔の中で暮らしていました。ぶっきらぼうに見える菅井さんは、亡き妻を想いながら不器用に人と関わろうとします。大学生の小鳥遊さんは進路に悩み、葵に「逃げてもいい」と励まされて笑顔を取り戻します。

そして、初恋の相手・龍司との再会。葵の料理を「おいしい」と言って食べてくれる龍司の存在が、葵の心をゆっくりとほぐしていきます。

四季の移ろいと共に、そらいろ食堂は人と人、人と動物、人と妖怪をつなぐ場になっていくのです。


誰におすすめか

この本を読んで「心が軽くなった」と思える人は多いはずです。

  • 毎日に疲れてしまった人
    → 温かい料理や人々の交流に癒され、心を休められます。
  • 家族との関係に悩んでいる人
    → 葵と父との再会や、そこで交わされた言葉が胸に残ります。完全な和解ではないけれど、父の謝罪や過去を振り返る時間を通して、葵が「自分の心を整理するきっかけ」を得たのが印象的でした。田牧さんのエピソードとあわせて、「人は誰かとどう向き合って生きるか」というテーマがより深く伝わってきます。
  • 「人生の有限さ」を実感している人
    → 人との時間は限られているからこそ、今この瞬間を逃さずに向き合うことが大切だと気づかされます。
  • ファンタジーが好きな人
    → 妖怪が恐ろしい存在ではなく、優しい存在として描かれているのが新鮮です。

進路に悩む若い世代から、家族や人生の意味を考える大人世代まで、それぞれの立場で響くものがあります。


どんなシーンで読みたいか

  • 夜、布団に入る前に静かにページをめくると、心がほっとします。
  • 休日の午後、コーヒーやお茶を片手にのんびり読みたい。
  • 春や秋、自然の移ろいを感じたい時にぴったり。
  • 「最近、大切な人と会えていないな」とふと思った時に読むと、背中を押されます。

特に、家族や友人と距離ができてしまった人が読むと「今すぐ会いに行こうかな」と思える本です。


印象的な登場人物と世界

🦆 アヒルのピー君と犬のハチ

ピー君は、葵の相棒のような存在。無邪気に振る舞う姿に、読者もつい笑顔になります。犬のハチは迷い込んできた野良犬ですが、すぐに村の人や葵に受け入れられ、仲間になります。この「動物に癒される感覚」が作品の魅力です。

👩‍🌾 村の人々

  • 大和田夫妻…葵を娘のように見守る存在。いちご狩りや玉ねぎの収穫など、田舎の暮らしの楽しさを伝えてくれます。
  • 田牧さん…かつては料理人。家族を顧みなかった後悔と、息子への愛情が胸を打ちます。
  • 菅井さん…一見強面ですが、不器用に優しさを示す姿が温かい。

村人たち一人ひとりに「人間くささ」があり、読者は「こんな人、身近にもいるな」と感じられます。

👻 妖怪たち

  • ミズハ(イタチの妖怪)…葵の幼い頃からの友達のような存在。厳しい言葉をかけながらも守ってくれます。
  • 座敷わらし…まるで家族の一員のように、あたたかく見守る存在として描かれています。
  • 狐のユキ…亡き母のことを知っているらしく、物語の核心に関わってきます。

妖怪たちは、人が気づかないところで支えてくれる「見えないやさしさ」の象徴のようでした。


読後に得られる気づき

1. 時間の有限さ

田牧さんの死や父との別れを通して、「人は会えるうちに会っておかないといけない」と痛感します。喧嘩している暇も、素直になれないまま時間を過ごす余裕もないのです。

2. 人とのつながりの力

葵は孤独に見えても、村の人々や動物、妖怪に支えられます。人は一人では生きられないという当たり前のことを、やさしく思い出させてくれます。

3. 見えない存在の大切さ

妖怪や動物たちは「目に見えないもの」に象徴されています。私たちの生活にも、直接目には見えないけれど心を支えてくれる存在があります。それは思い出だったり、亡き人の記憶だったりするのかもしれません。


感想まとめ

読んでいる間、田舎の緑や土の匂い、炊き立てのご飯や味噌の香りが漂ってくるようでした。場面ごとに「匂い」や「味覚」がリアルに伝わってくるのも、この作品の魅力です。

また、妖怪という存在を通して「死者や過去とのつながり」を自然に描いているのも印象的でした。怖さよりも温かさ、癒しを感じられるファンタジー。

本を閉じたとき、「大切な人に今すぐ会いたい」「ありがとうを伝えたい」と素直に思えました。


まとめ

『アヒルと犬とそらいろ食堂 季節めぐる、忘れじの記憶』は、

  • 心が疲れた人に寄り添う
  • 人とのつながりを思い出させてくれる
  • 「どう生きるか」を問いかけてくれる

そんな一冊です。

可愛い動物や妖怪に癒されながら、人生の大切な真理に触れる物語。読後は、自然と自分の身近な人を思い浮かべ、連絡を取りたくなるでしょう。

👉 温かい読書体験をしたい方、心をやわらかくしたい方に、ぜひおすすめしたい作品です。


📖 読んでみたいと思った方は、ぜひ手に取ってみてください。
「そらいろ食堂」で過ごす時間は、あなたの心を優しく包んでくれるはずです。


気になった方はこちらからチェックしてみてください。

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アヒルと犬とそらいろ食堂 季節めぐる、忘れじの記憶
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