この本で得られるもの
一穂ミチさんの『スモールワールズ』は、家族や人間関係の中で生まれる「言葉にしにくい感情」を繊細に描いた短編集です。
この本を読むことで――
- 家族や身近な人との関係を振り返るきっかけになる
- 他人の苦しみは完全には理解できないと知りつつも、寄り添う想像力を育てられる
- 叶わない願いにも意味があると気づかされる
- 予想外の展開に揺さぶられ、人生の不条理と同時に希望を見出せる
そんな読後感が待っています。
「短編集」と聞くと、軽く読めるイメージを持つ方も多いですが、この本の短編はどれも濃密で、心に爪痕を残します。1話ごとに驚き、感動、恐怖、優しさ……さまざまな感情を呼び起こす作品です。
誰におすすめか
『スモールワールズ』は、こんな方におすすめです。
- 家族の問題に向き合ったことがある人
- 子どもを持つ・持たないというテーマに関心がある人
- 「赦し」や「再生」といった重たいテーマを物語で味わいたい人
- 短編集で深い読書体験をしたい人
- 綺麗ごとではなく、リアルで生々しい物語に触れたい人
「読んでいて辛くなるかもしれない。でも最後に何か大事なことを受け取れる」そんな読書を求めている方には、特に刺さる一冊です。
どんなシーンで読みたいか
短編集なので、隙間時間に1話ずつ読むこともできます。
- 通勤・通学の電車の中で:短編ごとに区切れるから、無理なく読み切れる
- 寝る前の読書タイムに:重たいテーマもあるので、余韻を味わいながら眠れる
- 休日の午後にまとめて:6編を一気に読むと、テーマの広がりと深さを実感できる
重めの話も多いので、ゆったりした時間にじっくり読むと、より物語の奥行きを感じられます。
6つの短編、それぞれの魅力

ネオンテトラ――かなわない思いと人工の光
子どもがほしいのに思うようにいかない女性が、近所の少年と出会う物語です。
夜のコンビニで少し話すようになり、少年の居場所のなさに心がざわつきます。
少年の姿は、水槽の中で人工の光を頼りに泳ぐ「ネオンテトラ」のよう。
ポイント: 人を助けたいけど助けられないもどかしさ。自分の抱える空しさと、相手の孤独が重なったときの痛み。
魔王の帰還――家族と仲間と、夏の思い出
豪快で強いお姉ちゃんと、ちょっと気弱な弟。そして友だちの女の子。三人で夏の挑戦に向かっていくお話です。
にぎやかで笑えるやりとりの中に、それぞれが抱える事情や覚悟が隠れています。
ポイント: ふざけた言葉の裏にある優しさ。夏の日差しのように明るくて、でも少し切ない家族の物語。
ピクニック――母と娘、そして忘れられない時間
母と娘、そして孫娘。三世代が集まって楽しい時間を過ごすところから始まります。
けれど、家族の関係は少しずつゆがみを見せていきます。
ポイント: とても近い存在なのに、どこか遠い母と娘の関係。幸せの場面の中にひそむ違和感や、過去にふれたときに生まれるざらりとした気持ち。
花うた――加害者と遺族の手紙のやりとり
兄を失った女性と、その加害者。二人が手紙をやりとりする物語です。
はじめは怒りや憎しみに満ちていますが、やりとりを重ねるうちに、少しずつ相手の人間らしさが見えてきます。
ポイント: 許すってなんだろう、反省ってなんだろう。大きな言葉を、日常の小さな言葉に置きかえて考えさせられるお話。
愛を適量――不器用なお父さんと、変わっていく娘
少し疲れた先生である父と、「自分らしく生きたい」と思う娘が再会する物語。
お父さんの「よかれと思っての行動」が重すぎてしまうこと、娘が本当に求めているものとのすれちがい。
それでも少しずつ近づこうとする姿が胸に残ります。
ポイント: 「愛にも適量がある」というシンプルなテーマ。親子の関係に悩んだことがある人なら、きっと共感できる部分があるはず。
式日――父と子、残された思い
暴れる父を持った青年に、ある知らせが届く物語です。
「もしあのとき、ああしていたら」という後悔と、「もう過去には戻れない」という現実。
その中でどう未来に進むかが静かに描かれています。
ポイント: 開けなかったドア、言えなかったひとこと。心に残る未完成の思いと、それでも前に進もうとする力。
読後に得られる気づき

『スモールワールズ』を読むと、こんなことに気づかされます。
- 他人の事情は、結局はわからないもの
- 家族の形に正解はない
- 報われない努力もあるが、それでも生きていくしかない
- 願いが叶わなくても、その存在は意味を持つ
一穂ミチさんの筆致は生々しく、リアルで、時に残酷です。でもそこに「光」も差し込む。
短編集のそれぞれの物語が、まるで自分の中の小さな世界に収まっていくような感覚を残します。
まとめ――人生の不完全さを抱きしめる本
一穂ミチ『スモールワールズ』は、6つの物語を通じて「不完全な人生を、それでも生きていく」ことを描いた短編集です。
どの物語も予想外の展開で、いい意味で読者を裏切ってくれる。
生きる苦しみや不条理に触れながら、同時に「それでも大丈夫」と背中を押してくれる。
👉 家族や人間関係に悩んでいる人
👉 深く考えさせられる短編集を探している人
👉 予想外の物語展開を楽しみたい人
そんな方に強くおすすめしたい一冊です。
他の記事もおすすめです
もし今回のレビューが心に響いたら、ぜひ他の記事も読んでみてください。
気になった方はこちらからチェックしてみてください。
『スモールワールズ』は各ストアで詳しく見られます!
読書の時間が取りにくい方には、耳で楽しめる「Audible」もおすすめです。
通勤中や家事の合間に聴けるので、意外と読書が身近になりますよ。
→ Audibleを30日無料で試してみる
コメント