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死刑囚の最期の言葉『約束は守ったよ』に隠された真実

kyokai yuzuki yuko book cover.jpg 柚月裕子
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この本で得られるもの

『教誨』は、死刑囚・三原響子の人生を追いながら、人が罪を犯す背景、家庭や社会の影響、そして「人は善人でも悪人でもない」という宗教的な視点を描き出す小説です。この本を読むことで――

  • 家庭環境や社会構造が人を追い詰める現実を知る
  • 「約束」という言葉に込められた母娘の関係を考える
  • 人を裁くことの重さと、人の弱さ・不器用さに向き合う大切さに気づく
  • 被害者にも加害者にもなりうる人間の危うさを感じる

そんな深い学びや問いかけを得られます。軽い気持ちで読める作品ではありませんが、読み終えた後には「人に優しくありたい」と思わされる物語です。


誰におすすめか?

  • 20代後半以上の大人の読者に向いています。ある程度の人生経験がある人のほうが、響子の生き方や苦しみを理解しやすいでしょう。
  • いじめや家庭問題、死刑制度や社会問題に関心のある人
  • 「なぜ人は罪を犯すのか」という問いに向き合いたい人
  • 家族の在り方や「親子の絆」について考えたい人

特に「親ガチャ」という言葉に共感する世代には、深く刺さる内容だと思います。


どんなシーンで読みたいか?

  • 落ち着いた夜にじっくりと。
  • 心を深く動かす読書を求めているときに。
  • 自分や社会を見つめ直したいときに。
  • 感情が揺さぶられる本を求めているときに。

軽快に読める作品ではありません。けれど、読んで良かったと強く思える1冊です。


あらすじ

語りは、吉沢香純が死刑囚・三原響子の遺骨と遺品を受け取る場面から始まります。突然の役目を担うことになった香純は、戸惑いながらも教誨師や地元の人々を訪ね、響子の歩んだ人生を少しずつたどっていきます。

その過程で浮かび上がってくるのは――

  • 幼少期から続いた孤独やいじめ
  • 家庭での不安定な環境
  • 生きる居場所を見つけられなかった苦しみ

そして「約束は守ったよ、褒めて」という響子の最後の言葉。その言葉に込められた意味は、香純が多くの人に会い、響子の過去を辿る中でようやく輪郭を帯びていきます。


読後に得られる気づき

1. 暴力やいじめは連鎖する

物語を通して伝わってくるのは、暴力やいじめは個人だけでなく、その後の人生や家族にも影を落とすという現実です。響子は決して「生まれながらの悪人」ではなく、環境や人間関係に追い込まれていった姿でした。

2. 無条件の愛の大切さ

響子は「愛された記憶」に乏しい人生を歩みました。親の過干渉や世間体を優先する母親の態度により、響子は居場所を失い続けます。読者は、無条件に愛されることが人の生きる力になることを改めて思い知らされます。

3. 宗教がもたらす救い

物語の中で、教誨師が語る「人に善人も悪人もいません」という言葉は強い印象を残します。人は誰しも善と悪を併せ持ち、そのどちらに傾くかは環境次第。響子の人生はそれを証明しているようでもありました。

4. 「もし自分が響子だったら?」という問い

読後に強く残るのは、加害者と被害者を分ける境界線は思ったよりも曖昧だという気づきです。自分が同じ環境に生まれていたら、響子のような人生を歩んでしまったのではないか?そう思わせられます。

5. 社会に潜む「見て見ぬふり」の怖さ

響子の人生を追ううちに見えてくるのは、周囲の人が助けられる瞬間が確かにあったということ。いじめを見て見ぬふりをした同級生、娘を守るよりも、周囲の評価を守ろうとした母、弱い立場の親戚たち。誰もが少し手を差し伸べていたら、この事件は防げたのかもしれません。


本の価値と読者へのメリット

『教誨』は、決して楽しい物語ではありません。ですが――

  • 人を断罪する前に、その背景を想像する視点を持てるようになります。
  • 社会の中で弱者がどう孤立していくかを理解できます。
  • 「どうすれば人は救われたのか?」という問いを自分に投げかけることができます。
  • 自分の幸せや愛されてきた記憶を振り返るきっかけになります。

ただのフィクションではなく、現実社会に通じるテーマが詰まった作品です。


まとめ|心に残る問いかけ

『教誨』は、死刑囚の人生を描くという重いテーマを扱いながら、読者に「人を裁くとはどういうことか」を突きつけてきます。救いのない物語でありながら、そこに一筋の光を差し込むのは、教誨師の慈悲と、最後まで響子の人生を追った香純の存在でした。

読後には、きっとこう問いかけたくなるでしょう。

もし自分が響子だったら、どんな選択をしたのだろうか?

この問いは読者自身に返ってきます。だからこそ、心に深く残るのです。

ぜひ一度、この重みのある物語に触れてみてください。そして、読み終えた後には自分の大切な人に、何気ない「ありがとう」や「大丈夫?」の言葉をかけてみてほしいと思います。それが誰かを救う一歩になるかもしれません。


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