はじめに:ディストピアではなく「現実」の物語
『82年生まれ、キム・ジヨン』を読み終えたとき、まず思ったのは、
「これはフィクションという形をとった現実だ」ということ。
まるでディストピア小説のような世界。
でも描かれているのは、私たちが今まさに生きているこの社会でした。
だからこそ、読んでいて鳥肌が立つほどの衝撃があったのです。
同じく韓国の現代社会を背景にしながらも、今度は「癒し」や「共感」にフォーカスした物語として、ファン・ボルム著『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』もおすすめです。
一人ひとりの痛みに寄り添う、優しい読書体験ができました。
→ [『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』感想はこちら]
自分ごととして突き刺さる描写
これは“特別な物語”ではありません。
むしろ、「どこにでもある日常」そのもの。
・男の子であることが期待される妊娠
・幼い頃から弟ばかりが優遇される家庭
・働く上でも、結婚してからも、ずっと続く「女性だから」の理不尽
私たちが日々感じていながら言語化できなかった違和感を、
本書は静かに、でも鋭く突きつけてくれます。
女性に課せられる“見えない条件”
可愛く、優しく、空気を読み、感情的にならず、でも優しさは忘れない。
社会が女性に求めてくる「理想像」は、あまりに理不尽です。
大学教員が放つ「女が賢すぎると会社で持て余す」というセリフ。
それは、女性が“能力があるだけではダメ”という構造の象徴。
同じことをしても、同じだけ認められない——。
それが、いまだに根強く残る現実なのだと痛感します。
日本も例外じゃない
これは韓国の話?
……いいえ、日本もまた、同じ空気をまとっているのではないでしょうか。
少子化、育児と仕事の両立の困難さ、
キャリアを諦める女性、そして「察して耐えること」が求められる構造。
問題なのは、仕組みについていけない個人ではなく、
“仕組み自体が誰かの我慢を前提としている”という事実です。
男性にこそ読んでほしい理由
キム・ジヨンと夫のすれ違いは、この物語の核心かもしれません。
彼は悪い人じゃない。むしろ優しいし、協力的。
でも、「見えていない」んです。
どれほど相手を思っていても、
構造に気づいていない限り、決して分かり合えない壁がある。
そのことを、静かに、でも確かに伝えてくれるシーンがいくつもありました。
🌱一歩の気づきが、未来を変えるかもしれない
『82年生まれ、キム・ジヨン』は、読む者に問いかけてきます。
「私はこの社会を、どう生きているのか?」
「何を見過ごしてきたのか?」
すぐに仕組みが変わるわけではない。
だけど、まず「気づく」ことが、すべての出発点。
この本を読み終えた今、
少しでも自分自身の偏見や、他人に課していた“無意識のルール”に目を向けたい。
そんなふうに思えたら、それはきっと、未来への一歩になるはずです。
気になった方はこちらからチェックしてみてください。
『82年生まれ、キム・ジヨン 』は各ストアで詳しく見られます!
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